後家はダークホースだった!
愛する女性と結婚して子供もできた。なのに出産によって妻も子供も失った。喪失感に苦しんだ男は、ようやく心の傷を癒して再婚することを決意。
これはあるシリーズ小説の主人公の話。ボクが最初に期待した再婚候補はハズレ。その次に現れた候補も素敵な女性だった。だけどその女性は水難事故で最近の記憶を失くしてしまう。つまり主人公のことを忘れてしまった。それでも、その主人公は勇気を出して結婚を申し入れた。
こんな状態で終わっているので、ボクはずっと気になって仕方なかった。なぜ主人公はこれほど再婚にこだわるのか? それは江戸時代の物語だから。
2022年 読書#93
『いわいごと』畠中恵 著という小説。『まんまこと』シリーズという作品で、第1弾は2007年に出版されている。この作品で第8弾となる。
主人公は高橋麻之助という町名主の跡取り息子。町名主というのは、奉行所では扱わない街の揉め事を仲裁する町役人。麻之助は一人っ子なので、嫁をもらわないわけにはいかない。世襲で繋がれていく役目なので、結婚しないという選択肢はこの時代にはなかった。
毎回6編の短編で構成されている。連続ドラマのように話は関連しているので、第1弾から読まないと人間関係が理解できない。回を重ねるごとにレギュラー陣が増えていくので、ますます物語に深みが増している。
『こたえなし』
『吉五郎の縁談』
『八丁堀の引っ越し』
『名指し』
『えんむすび』
『いわいごと』
という6つの物語。第7弾で麻之助の後妻候補となったのはお雪という女性。ちょっと無茶をするところは最初の妻だっお寿々に似ている。とても頭が良くて、推理力も高い。だから事件の謎を麻之助に代わってお雪が解決したこともあった。町名主の妻としては最高の女性だった。
ところがお雪には麻之助に関する以前の記憶がない。だからもう一度関係を作り直す必要があった。『こたえなし』という物語は、文字通りにお雪の答えがないということ。結婚を申し入れたけれど、お雪は迷ってしまい答えが出せない。
それでもうまくいくと信じていたのに……。
お雪が返事を先延ばしにしていたことで、実質的に縁談を仕切っていた彼女の祖母であるお浜がキレた。この縁談はうまくいかないと断定して、別の縁談をお雪に勧めてしまい、それが成立してしまう。おぉ、なんてことだ!
ところが麻之助にも出会いがあった。きっかけは他の町を支配している町名主が、後継のないまま亡くなってしまった。それで誰が後を継ぐかというとき、正式に決まるまでに見習いの麻之助がその町に派遣された。そのとき手伝ってくれたのが、他の町内を支配する町名主の娘。名前はお和歌。
まさにダークホース的な登場のお和歌。町名主の娘だから、麻之助の父親にすればこんなありがたい話はない。町名主の嫁として即戦力になるから。
ということで様々な紆余曲折を得て、最後の『いわいごと』で二人は夫婦となる。ところがこの物語には素敵な仕掛けがしてあった。結婚が決まったはずのお雪が破談しそうな状態になっていた。祖母のお浜がお雪の結婚相手を試したところ、彼はその期待に応えられなかったから。
そんなお雪の窮地を救ったのが麻之助で、お和歌も手を貸す。二人の協力によって、お雪の縁談は無事に成立する。そして麻之助たちも祝言をあげた。
やれやれ、本気で心臓がバクバクしながら読んだ第8弾だった。少しだけお和歌のユニークなキャラも紹介されているので、次回の作品からは大活躍しそうな予感。すでに第9弾が今年になって出版されている。図書館で予約が殺到しているので、読めるのは先になりそうだなぁ。
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