イスラム教が目指す世界
日本人の宗教観を構成しているのはアニミズムで、あらゆる存在に神が宿るという思想が基本にある。それゆえ多神教的な思想によって、宗教に対する懐がかなり深い。
神道的な宗教だけでなく、外国から伝わってきた仏教がしっかりと根を張っている。特定の時代に排斥されることもあったけれど、キリスト教に関しても寛容な姿勢を見せてきた。憲法でも信仰の自由が保障されていて、宗教の多様性が容認されている。いまは統一教会が問題視されているけれど、
といって宗教に熱心な民族ではなく、外国人から見れば無宗教的な人が圧倒的というイメージだろう。宗教観に節操がなく、神社に初詣に行き、クリスマスは盛大に祝い、家族が亡くなったら仏教の僧侶を呼ぶ人が多い。日本人に信仰心がないのではなく、やはりアニミズム的精神が刻み込まれているんだと思う。
そんな日本人にとって分かりづらいのがイスラム教。自殺は認められていないのに自爆テロは賞賛される。「イスラム国」のような組織が、宗教の名の下に世界中でテロを繰り返している。アメリカの同時多発テロで知られることになったアルカイダもイスラム教の組織。
そんなイスラム教の謎を理解できる良書を読んだ。
2022年 読書#95
『イスラム教の論理』飯山陽 著という書籍。著者はイスラム思想の研究者で、以前にエジプトに関する本を読んで感銘を受けた。それでもう少しイスラム教について理解を深めたくて、この書籍をチョイスした。先ほどの謎は、この本を読めばスッキリと理解できる。とても勉強になる内容だった。
イスラム教について知りたいと思う人は少ないかもしれない。だけどグローバル化している現代社会において、日本人であってもイスラム思想を無視できない状況になってきている。
深く掘り下げられている本の内容を詳細に説明するのは難しい。興味をもった人は、是非ともこの本を手にしてほしいと思う。説明できないけれど、イスラム思想がどのようなものかだけを記しておこう。
「アラーの神ファースト」
これに尽きる。人間というのは神のしもべであって、イスラム法が何よりも優先する。預言者であるムハンマドが伝える言葉がすべてであり、それ以外はないという宗教。
だからイスラム思想は、民主主義よりも優先する。なぜなら民主主義は人間が作ったものでしかないから。世界はいずれイスラム教徒によって支配されると考えられていて、それ以外の宗教は異教として処分の対象になる。だからイスラム教の信者でない日本人もジハードの対象となり、テロの標的になっている
自爆テロを含めたジハードもイスラム法に記載されていて、自殺は絶対にダメだけれども、自爆テロは最高の行為だと本気で考えられている。国連に名を連ねるイスラム国家は、世界的な体裁を保つためにそうした過激思想をぼやかしているだけ。イスラム教の信者である限り、世界を支配するという目的は絶対だということ。
「イスラム国」などはそうした体裁を持たず、純粋にイスラム教の信者として行動している。その規範となるのはコーランであり、ムハンマドの言葉。だからテロ行為は悪ではなく、イスラム教信者として正当な行為だということ。イスラム教を信仰している人なら、「イスラム国」の行為を表立って非難することはできない。彼らはイスラム法に基づくことしかやっていないから。
とにかくイスラム関連のテロは、決して外国の出来事でない。そのことを信じられない人は、やはりこの本を一読するほうがいいと思う。
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