抱えた重荷の降ろし方
久しぶりに雨が降ったりやんだりの神戸。ちょうど買い物の帰り道には雨があがったので、想像していたより楽に歩くことができた。それでも家に戻って重い荷物を降ろすと、ため息をつきながらも心地よい開放感を味わうことができた。
でも心に抱えた深い重荷は、買い物のように簡単に降ろせない。その重荷に強い罪悪感が介在していればなおさら。そんなとてつもない人生の重荷を抱えた人物たちを描いた映画を観た。
2022年 映画#172
『ハミングバード』(原題: Hummingbird)という2013年のイギリス映画。ジェイソン・ステイサムが主演しているので、バリバリのアクション映画だと思って観た。たしかにアクションシーンはあったけれど、どちらかといえば切ない物語。アクションでスッキリするという内容ではない。
ジェイソン・ステイサムの派手なアクションを期待した人は、がっかりする作品かもしれない。ボクも彼のアクションに期待していたけれど、映画の内容に惹きつけられてしまった。この映画のジェイソン・ステイサムは、いつもとちがうけれど魅力的だと思う。そしてどこかかわいそうだった。
ジェイソン・ステイサム演じるジョゼフは元特殊部隊の軍人。ところがアフガニスタンで五人の仲間を目の前で殺された。怒り狂ったジョゼフは、テロ事件に関係のない民間人を5人殺してしまう。それで軍法会議にかけられることになったが、病院から逃亡してホームレスとなっていた。
ホームレスを餌にしているギャングが現れ、ジョゼフたちの寝床を襲ってきた。ジョゼフはイザベルという少女のホームレスと助け合っていたが、暴行を受けて大怪我を負い離れ離れになる。たまたま家を留守にしてニューヨークに行っている人間の家を見つけ、その住人になりすまして怪我を治療した。
その治療を助けてくれたのが、ホームレスに奉仕をしている修道女のクリスティナ。映画の展開としては、ジョゼフとクリスティナの恋愛物語という形を取っていく。二人は共に人生の重荷を背負っていた。
ジョゼフは怒りに任せて民間人5人を殺したという重荷。クリスティナは体操選手だったが、少女時代からコーチーにレイプされていた。そして18回目のレイプを受けそうになったとき、用意していた刃物でそのコーチを殺してしまう。未成年だったので刑務所は免れたけれど、修道女になることが条件だった。
ジョゼフは離れてしまったイザベルが娼婦にされ、その後に殺されたことを知る。その復讐のために中国人マフィアの用心棒で大金を稼ぎつつ、犯人を探してイザベルの仇を打とうとしていた。そんな悪の道に走るジョゼフを、クリスティナはどうにか止めようとした。
この二人の関係がなんとも言えない不思議ないい味を出していた。復讐を遂げようとするジョゼフと、人生の重荷を降ろそうと格闘しているクリスティナ。共に重荷を抱えている二人だからこそ、互いのことを理解できた。一度だけ大金を手にして、二人で逃げるというチャンスもあった。そうすればハッピーエンドだったのに。
だけどジョゼフは復讐をやめられない。そしてクリスティナも神の道から外れることはできなかった。だから二人の進む道は分かれるしかない。ジョゼフは復讐を遂げて再びホームレスとなって軍警察に追われる。クリスティナは愛するジョゼフと離れてアフリカで新しい奉仕の生活を選ぶ。
とても切なくて悲しいラスト。償うことが難しい重荷を抱えた二人が、互いに助け合って生きて欲しいと願った。でもそれが許されれないほどの重荷を、二人は抱えていたということなのだろう。アクションではないけれど、とても素晴らしい映画だったと思う。
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