実話で知った山火事の恐怖
ボクは大学を出て父親が経営する消防設備の会社で働いていた。消防設備士の資格を全て取り、火災報知器や消火栓の法定点検の仕事をしていた。それゆえ一般の人より火災についての知識はあるし、消防士さんたちから実際の火事の事例を聞いたりもしている。
それでもある映画を観て、ボクが知らなかった火災の恐怖を疑似体験した。それはアメリカでよく耳にする山火事。大きな被害が出ることで知られているけれど、なんとなくニュースで見た程度では実態を理解していないことを痛感した。アメリカ史上最悪と言われている山火事の映画化作品を観た。
2022年 映画#181
『オンリー・ザ・ブレイブ』(原題:Only the Brave)という2017年のアメリカ映画。ヤーネルヒル火災と呼ばれている山火事があった。アリゾナ州のヤーネルヒルにおいて2013年6月28日に落雷によって山火事が発生した。そのときの悲劇を描いた作品で、観終わったあとにショックで言葉が出なかった。
中心となる主人公は二人。一人はエリック・マーシュという消防隊と救助隊のリーダー。自治体に認定されたチームはホットショットと呼ばれている。でもエリックのチームはまだ認定が降りず、プロとして認められていなかった。
映画の前半はエリックの厳しい指導と訓練によって、このチームがホットショットに認定される様子が描かれている。ボクは映画の内容を知らずに観ていたので、彼らがホットショットになって大活躍をする映画だと勝手に思っていた。このチームは「グラナイト・マウンテン・ホットショッツ」と命名された。
もう一人の主人公はジャンキーのブレンダン・マクドナウ。麻薬に溺れた生活をしていたが、恋人に子供ができたことを知って改心する。それでメンバーを募集していたエリックのチームに応募した。エリックも薬物依存の経験があったので、人生をやり直したいと考えるブレンダンを採用する。
エリックのチームは様々な現場で大活躍をして、住民を火事から救うヒーローとして新聞でも取り上げられる。だけど危険の多い仕事なので、ブレンダンは山火事でなく建物火災の消防士への異動を希望する。エリックはなんとか引き留めるけれど、彼の意向を受け入れて願いを聞き入れることにした。
そしてエリック自身も現場からの引退を考えていて、隊長のジェシーにこのチームを任せることを約束していた。そんなおり、ヤーネルヒルで火災が起きる。当初は大したことないと思われたが、あっという間に恐ろしい火災へと変貌した。
エリックたちは防火壁を作って火災を止めようとする。だけど飛行機が間違って彼らが火をつけた防火壁を消火してしまう。仕方なくエリックたちは火災の広がりを警戒しながら、別の場所へ移動することにした。そのときに炎の状況をチェックするため、見張りに立ったのがブレンダンだった。
ブレンダンは火の勢いが尋常でないことに気づき、無線でエリックに伝える。彼は炎に包まれてもう少しで死にそうだったが、別のチームの救援隊に助けられてキャンプ地点に戻った。ところがエリックたちは炎に囲まれて孤立してしまう。
彼らは500度の炎に耐える防火シートを各自持っている。ところが迫ってきた火の勢いは化け物のよう。なんと1000度を超える猛火となってエリックたちを襲った。2時間後に救援隊が向かったが、そこには防火シートに包まれた19人の遺体があった。チームで生き残ったのは見張りをしていたブレンダンだけだった。
とにかく山火事の炎が走るスピードは想像をはるかに超えている。あんなもの絶対に逃げられない。あまりにショックで観終わっても呆然としているしかなかった。消防士や救急隊の仕事が命をかけたものであることを、改めて思い直させてもらえた映画だった。
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