極限状態で壊れる人間性
今日は早朝から夕方になっても、サッカーワールドカップの話題がネットで飛び交っている。日本と同じグループで決勝トーナメントに進出したのは1位の日本と2位のスペイン。だけど試合途中までは、どのチームにも決勝トーナメントに進めるチャンスがあった。
結局日本がスペインに勝った時点で、勝ち点は同じでも得失点差で負けているドイツは敗退が決まった。きっとドイツの人たちはショックで仕事が手につかないだろう。一方で日本の人たちは、ハイテンションのままで出勤した人が大勢いただろうと思う。
さていよいよ決勝トーナメント。4年前も日本はここまで来たけれど、次の一歩へ進むことはできなかった。相手はクロアチア。三浦知良選手が1999年にこの国のザグレブというチームに所属していた。サッカー強豪国として有名で、ワールドカップで準優勝の経験もあるからマジで強い。どんな試合になるのか楽しみ。
クロアチアは1991年にユーゴスラビアから独立した国。ユーゴスラビアは複数の民族で構成されていた国家で、ボクは第二次世界大戦中のユーゴスラビアを舞台にした作品を読んでいるところ。いよいよラスト前まで読了した。
2022年 読書#112
『石の花4』坂口尚 著という漫画。第3巻の感想については、『敵も味方も必要な戦争資金』という記事に書いているので参照を。全5巻ある物語もついにラスト前になった。今朝からは最終巻の第5巻を読んでいる。
ドイツの侵攻から始まったユーゴスラビアの悲劇。ユダヤ人はナチスによって収容所に送られ、国家は枢軸国側と連合国側に分裂。ドイツ等の枢軸国についたのはクロアチ人たち。セルビア人たちで組織されたチェトニク、そして共産主義者が主導するパルチザンはドイツと戦っている。
ところが同じ敵に向かっているはずのチェトニクとパルチザンが争うことになり、ユーゴスラビアは内戦状態に陥っている。90年代の悲惨な内戦でも見られたようにこの国は一枚岩とはいかない。これは日本人には理解しづらい部分だと思う。
第4巻はそんな悲惨な内戦だけでなく、激しくなるドイツ軍の攻撃によるパルチザンの悲劇も描かれている。主人公のクリロは16歳になって少年部隊を率いている。でもドイツの攻撃は激しくなる一方で、極限状態のなか人間性を失っていく人たちを目の当たりにしていた。そして彼自身も、自分のなかで何かが壊れていくことの恐怖を覚えている。
一方クリロの親友だったフィーは、ドイツのマイスナー大佐の元を離れて女性収容所に戻った。マイスナー大佐は彼女を助け出そうとするけれど、収容所から出ようとしない。働けないものが殺されていくのを見ながら、フィーは収容所で必死になって生きようとしていた。
二重スパイであるクリロの兄であるイヴァンは、イギリスの命を受けてドイツに戻った。そんな彼もユーゴスラビアの惨状を見て絶望的な気持ちになってしまう。そしてドイツ側にスパイだと知られそうな気配もしてきた。だけど時代は1943年。ドイツの戦況に陰りが見えてきた時期でもある。
おそらく第5巻では、ユーゴスラビアにおける終戦までが描かれていくことになるんだと思う。クリロ、フィー、そしてイヴァンを待ち受けている運命は? その結末を読みつつも、日本とクロアチアが平和のなかでサッカーの試合ができる喜びを感じたいと思っている。
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