人生の課題からは逃げられない
「向き合うべきことからは、決して逃げることはできない」
これはボクの人生観を支えている信条で、逃げられないのなら今すぐやってしまおうという、モチベーションの原動力でもある。ただその課題によっては、辛くて向き合えないものもあるだろう。だから言い訳を考え、できない理由を山ほど積み上げて、どうにか先延ばしにしようとする。
でも逃げられないのは事実。もしこの人生で向き合うことができなければ、次の人生における課題として繰り越すことになる。これがいわゆる輪廻転生の考え方で、生まれ変わりを信じている人にはわかってもらえるだろう。この人生で逃げても、その課題からは永遠に逃げられない。
生まれ変わりを信じない人にとっても、やはり向き合うべきことからは逃げられない。なぜならそれは意識するしないに関わらず、心にどっかりと居座っているから。生まれ変わりを信じないのなら、なおさら逃げることで今の人生の貴重な時間を失ってしまう。それらは人生の終盤になればなるほど重さを増して、向き合うためには多大なエネルギーが必要となってくる。
平和に暮らしているように見える男に、先延ばしにしていた課題がいきなり降りかかったという映画を観た。中年以降の人には、とても切ない物語だと思う。
2022年 映画#202
『セカンド・カミング』(原題:California Solo)という2012年のアメリカ映画。日本では未公開だったそうで、いい映画だっただけに残念に思った。主演はイギリスの名優であるロバート・カーライル。最近の映画で彼を観たなと思っていて、この作品でサングラスを着けている姿を見て思い出した。
『イエスタデイ』というビートルズが存在しないパラレルワールドを描いた作品がある。とても素敵な映画で、エド・シーランが本人役で出演している。その作品で主人公が年老いたジョン・レノンに会いにくシーンがある。ビートルズが存在しなかったということは、彼が暗殺されていないということ。その時にジョンを演じていたのが、このロバート・カーライルだった。そういえば顔がよく似ているよね。
主人公はラクランという農場で働く男性。スコットランドの出身だけれど、アメリカの永住権を持っている。アメリカで暮らすようになったのは、イギリスで有名なバンドを結成していたのがきっかけ。だけどアメリカでのメジャーデビュー直前にバンドが解散してしまった。バンドのメインであるメンバーが急死したから。
バンド時代の13年前のラクランには妻と娘がいた。だけどバンド解散後は離婚して、たった一人で暮らしていた。ある日彼はバーで泥酔してしまい、飲酒運転で警察に捕まってしまう。その結果、彼は移民局から強制帰国の処分を受けそうになった。
というのはバンド時代に大麻所持で捕まっていて、強制送還にリーチがかかっていた。そんなことを知らずにアメリカで暮らしていたが、飲酒運転で自分がギリギリの状態でアメリカにいることを知った。そうなればグリーンカードなどなんに意味もないらしい。
絶対にスコットランドへ戻りたくない。どうしてもアメリカで暮らしたい。そのためにラクランは必死に動く。少ない貯金をはたいて弁護士を雇ったり、元妻に依頼してアメリカに残る事情を捏造してもらおうとする。
ラクランがスコットランドに帰りたくない理由。それはバンドのヴォーカルを死なせた原因が彼にあったから。アメリカでのメジャーデビューが決まってレコーディングに集中していた。その疲れを取ろうとして、ラクランはヴォーカリストに麻薬を勧めた。その人物は断ったのに強制した。それが原因でヴォーカリストは死んでしまった。
そしてそのヴォーカリストとは、ラクランの兄だった。バンドを失敗に追い込み、兄を死なせてしまった。そんな自分が生まれ故郷に帰れるわけがない。地元の人間に合わせる顔がない。ラクランはその罪悪感に向き合うことをせず、ずっとアメリカで逃げ続けていた。それが飲酒運転によって転機を迎えることになった。
最終的にラクランは、その罪悪感にう向き合うことを決意する。無駄な工作を諦めてイギリスに戻ることにした。だけど失ったものばかりではない、ずっと会わなかった13歳の娘との絆が復活した。スコットランドまで会いにきてくれるという娘の言葉を胸に抱きしめ、アメリカを離れていくというラストだった。
人生の課題から逃げ続けることをやめたとき、新しい世界が見えてくる。そんなことを教えてくれる素晴らしい作品だった。
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