『ローマの休日』より好み
イギリスびいきのボクは、イギリスを舞台にした映画が大好物。そこで昨年に亡くなったエリザベス女王を主人公にした映画を観た。思っていた以上に素敵な作品で、何度も観たくなる物語だった。
2023年 映画#8
『ロイヤル・ナイト 英国王女の秘密の外出』(原題: A Royal Night Out)という2015年のイギリス映画。タイトルで分かるように、まだ即位前のエリザベス王女が秘密の外出をするという物語。そして決して成就しないほのかな恋を経験する。
これだけで『ローマの休日』を思い出す人が多いだろう。まさに展開としては同じ雰囲気。ところがこれはエリザベス王女という実在の人物が登場するし、そのきっかけとなった出来事は実話だった。
ナチスドイツのヒトラーの自殺によって、第二次世界大戦が終了した。1945年5月7日にドイツは無条件降伏に調印。それゆえイギリスでは5月8日に勝利を祝う人たちが大勢集まった。王女であるエリザベスと妹のマーガレットは、国民たちと一緒に戦勝を祝いたい。パーティーにも参加したい。
国王夫妻は最初は大反対。だけど娘たちに押し切られ、護衛付きでリッツ・ロンドンというホテルのパーティー会場へ行くことになった。具体的な場所はわからないけれど、姉妹がこの当時にお忍びで国民に混じって勝利を祝ったのは実話とのこと。そこから作られたフィクション。
基本的にはコメディなので、とにかく笑いっぱなし。最高なのは妹のマーガレット王女。彼女は自由奔放な性格で、かなりの天然。すぐに貴族が集まる会場を抜け出して、たまたま知り合った将校と外に出てしまう。妹が出たのを知ったエリザベスは、彼女が無鉄砲なのを知っている。それであわてて自分も抜け出した。
護衛の二人は戦勝に浮かれて完全に姉妹を見逃してしまう。厄介なことにマーガレットは次々と場所を移動する。最終的には娼婦館まで出入りして、もう少しで彼女の身元を知らない将校に乱暴されそうになった。
全体の流れとして、必死で妹を探すエリザベスの物語になっている。そんなとき、たまたまバスで知り合ったジャックという空軍兵士が助けてくれた。なぜならエリザベスはバス賃さえ持っていなかったから。素性を隠したままのエリザベスに、ジャックは最後まで付き合ってくれる。
その道中で二人は自分たちの境遇を語り合う。エリザベスは現在の状況から抜け出したいと思っていた。ジャックは上官の不当な扱いに嫌気がさして、無断で兵舎を離れていた。翌日の点呼に戻らなければ、脱走兵として処分されてしまう
最終的に妹が見つかり、護衛の兵士たちとも合流する。すでに朝になっていた。ジャックは姉妹を守ったことで宮殿の朝食に招待された。そして別れの時間が近づいてきた。
だけど別れがたいエリザベスとジャックは、短い時間を二人だけで過ごす。もしこのまま二人で失踪しても、どうにか暮らしていけるかもしれない。二人は本気でそう語り合う。
やがて太陽が高く登り、空軍の点呼の時間が近づいてきた。二人はそれぞれの運命を受け入れ、自分のあるべき場所に戻っていくというラスト。面白かったのは兵舎の検問で、エリザベスが本名を名乗ったシーン。警護している兵士の困惑した表情が最高だった。そしてその兵士の前で、ジャックと王女はキスを交わす。とても素敵なシーンだった。
ボクとしては『ローマの休日』という映画が好きだけれど、この作品のほうが圧倒的に好み。何よりエリザベスを演じたサラ・ガドンが最高にキュート。どことなくエリザベス女王の面影もあって、彼女の表情を見ているだけでも楽しかった。
そしてジャックを演じたジャック・レイナーもいい演技だった。朴訥な雰囲気がいい味を出していたなぁ。つい最近『ペリフェラル』というドラマで、主人公の兄を演じていた彼を観たばかりなので、余計に親しみを持てたかもしれない。幸せな気分になれる素敵な作品だった。
ちなみに『ローマの休日』は、妹のマーガレット王女がモデルだという説が有力らしい。破天荒な女性なので、あの映画のモデルだと言われたら納得するなぁ。
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