永遠に消えない音楽への愛

投稿日：2023.01.22｜カテゴリー：読書・映画・音楽

10代のボクにとって世界最高の歌姫だったオリビア・ニュートン＝ジョン。その当時に行った来日公演のことを今でも鮮明に覚えている。だからこそ昨年の彼女の訃報に打ちのめされた。そんなオリビアが第一線を退いた20代の頃、一目惚れ、いや一耳惚れした歌手がいる。

それがデビー・ギブソン。20代のボクは彼女の来日公演に２度行ったし、当時のアルバムはすべて持っていたし、ライブビデオも購入してテープが擦り切れるほど観た。ボクにとってデビーはオリビアの再来で、音楽を愛する心をさらに広げてくれた存在だったと思う。

アップテンポの曲も多い彼女だけれど、やはりバラードが最高。現在は52歳のデビーが19歳だったころにリリースした『Lost In Your Eyes』という曲がある。ボクはこのミュージックビデオを見てノックアウトされた。彼女の持つ雰囲気と美しいメロディが完璧にハマった作品。

40代以上の洋楽ファンなら知っているはず。全米で１位になった曲だからね。そのビデオを見たら、ボクがノックアウトされた理由がわかると思う。

その後の彼女はミュージカルに出演したりと、現在も音楽活動を続けている。そしてボクは知らなかったけれど、映画の主演もしていた。デビーが45歳のころの作品。その映画を観て、20代のボクの歌姫がその後も輝いていたことを知ることができた。

2023年　映画＃12

『ミュージック・イン・ミー』（原題：The Music in Me）という2015年のカナダ映画。デビー・ギブソンが演じるのは、元シンガーソングライターだったけれど家庭の事情で音楽を諦めたジェシカ。彼女が再び表舞台に返り咲くまでを描いた物語。

LAの音楽業界で働く友人と旅行を計画したジェシカ。普段は心臓の悪い父親の金物屋を手伝っている。留守中に店を見てくれるはずだった弟の夢を叶えるチャンスがやってきた。それでジェシカは旅行を諦めて両親の店を手伝うために残った。

音楽を捨てたはずのジェシカに転機が訪れた。地元の教会が100周年を迎える。メインである聖歌隊の合唱が予定されていたけれど、指導者が辞めてしまった。素人の集団なのであまりに酷い状態だったから。それで父の親友である牧師に依頼されて、音楽の素養のあるジェシカが指導することになった。

ところが教会の女性執事はジェシカの指導を邪魔する。聖歌隊が歌えないのはきちんとした指導を受けていなかったから。そして音楽の楽しさを教えてこなかったから。だから賛美歌等の定番ソングでなく、もっと親しみやすい曲の練習をしようとした。でも執事の妨害で思うようにいかない。

そこからは想像できるように、ラストでは聖歌隊が見事な歌を披露するというハッピーエンドの物語。物語のテーマはタイトルでもわかるように、永遠に消えない音楽への愛。邪魔をしていた女性執事も、以前はプロの歌手だった。だけど音楽のせいで離婚して娘からも無視されるようになった。音楽を愛しているのに、憎んでしまう。それが聖歌隊への妨害となっていた。

それ以外にネグレクトを受けている女子高生も登場する。彼女も聖歌隊での活動を通じて人生の絶望から立ち直る。そしてジェシカにも大きな変化が起きる。彼女は聖歌隊のメンバーに、自分は決して指導者を辞めないと『約束』した。だけど父が倒れ、店を守らなくてはいけない。それで指導ができなくなった。

そんなとき彼女は『約束』という歌を創った。久しぶりの新曲。それをLAの親友に聞かせた。ところが親友はそれをネットにアップして、音楽業界の友人に紹介した。たちまちアクセス数が増えて、ジェシカが音楽業界から注目される。

その影響もあって、教会の100周年には大勢の人とマスコミが訪れた。そして指導者に戻ったジェシカの演奏で、聖歌隊が素晴らしい歌声を聴かせる。もちろんそこには音楽への愛を捨てられなかった女性執事もいた。そしてラスト近くでジェシカの『約束』という曲が初めてライブで披露される。

これが最高に素敵なシーン。ボクは涙が止まらなかった。もちろん40代になっても頑張っているデビーの姿を見たせいもある。それが映画のジェシカと重なることで、さらに感動することになったから。動画を探すと、デビーのファンがまとめている映像が見つかった。

映画のラストシーンと、ジェシカが親友に送ったときの『約束』という曲が見事にミックスされている。先ほどの19歳のデビーと45歳のデビーとを見比べてもらったら、音楽への愛が永遠に消えないことを感じてもらえると思う。さて、その号泣するシーンを貼っておこう。