カットされたキャラの重要な役割
システム変更のため昨年末から休止中の神戸市図書館は、今月の31日から再スタートする。その休止で延長された貸出期間において、一気に読み進める作品を選んだ。それらを自分勝手に読書駅伝と名付けて、心の中で次の本にタスキを渡している。
その読書駅伝も、ついに昨晩にアンカーの本へタスキが渡った。これでどうにか図書館のスタートに間に合いそう。そしていよいよ力の指輪の最後が近づいてきた。
2023年 読書#11
『新版 指輪物語8 王の帰還 上』J・R・R・トールキン著という小説。前作についての感想は『映画限定の過剰な演出』という記事に書いているので参照を。
さてこの作品から映画の『ロード・オブ・ザ・リング』の3作目である『王の帰還』に突入する。映画ではフロドとサムの指輪を葬る旅、そしてアラゴルンたちの戦いが同時進行で描かれている。でも原作は分けて書かれていて、今回はアラゴルンやガンダルフの戦いのみに焦点が当てられている。
メインとなるのはペレンノール野の合戦だろう。サウロンは雌雄を決するべく、大量の軍隊をゴンドール国のミナスティリスに派遣する。圧倒的な兵力にガンダルフやピピンたちが参加しているゴンドール軍が敗れそうになったとき、メリーと共にやってきたローハン国の兵士が参戦する。さらにアラゴルン、レゴラス、ギムリたちが引き連れた南方国の兵士が戦闘に参加することで、大逆転とするという戦い。
今回も映画と大きくちがう部分だけを書いておこう。今回のエピソードでは、重要な役割をするキャラが映画でいくつもカットされている。尺の制約がある映画ではカットするしかなかったのだろう。映画のクレジットに残されたなかったそんなキャラを紹介しておこう。
まずはガン=ブリ=ガンというドルアダンの森の大酋長。ローハン軍はミナスティリスに近づいてきたけれど、時間的にまに合いそうにない。そんなとき、この大酋長が自分たちの領地を解放してローハン軍を通過させた。この近道によってローハン軍はサウロン軍を奇襲することができた。とてもユニークなキャラだったので、映像で見たかったと思う。
もう一人はゴンドール国のベレゴンドという近衛兵。映画ではガンダルフに連れてこられたピピンは、ゴンドール執政であるデネソールに仕えることを誓うと、そのままペレンノール野の戦争に巻き込まれていく。ところが原作のピピンにはゴンドールを散策する時間があって、ベレゴンドと彼の息子が街を案内していた。
このベレゴンドは原作で大活躍をする。サウロンに勝てないと思い込んだデネソールは、瀕死の息子であるファラミアを自分と一緒に焼いてしまおうとする。映画ではピピンに急を告げられたガンダルフが救いにやってくる。
でも原作では、ガンダルフを呼びにいくピピンがベレゴンドにファラミアを守るように依頼した。ベレゴンドはファラミアを信奉していたから。そしてピピンがようやくガンダルフを見つけて戻ってきたとき、すでにデネソールは火をつけようとしていた。そんな状況でベレゴンドは執政側近の兵士を殺してまでも、ファラミアを守っていた。もし彼がいなかったら、将来にアラゴルンの執政となるファラミアは焼死体となっていただろう。
という感じで、原作には映画にないキャラが大勢登場する。そして物語の設定もいくつかちがう。映画ではアラゴルンが幽霊の軍団を連れてくる。そしてペレンノール野のオークたちを殲滅する。原作の幽霊たちは、アラゴルンたちが南方の兵士や船を連れてくるために活躍している。戦場まではやってこない。
さらに原作ではアラゴルンの王としての大事な役割が描かれている。それはヒーリング。ファラミアはアラゴルンが治療しなければ死んでいた。そしてアングマールの魔王を倒したメリーとローハン国のエオウィン姫も、アラゴルンのヒーリング能力によって息を吹き返している。これこそが王であることの証明だった。
さて、今夜からはフロドとサムの活躍を読み進める。いよいよ駅伝もアンカーになったなぁ。
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