高齢化社会の理想的モデル
相変わらず新しいミュージシャンを探すという楽しみを続けている。そんななか、どうしても素性のつかめない女性シンガーがいる。
最初に見たのはTikTokのおすすめ動画。ライブ映像で、気持ちのいいメロディとハスキーな彼女の声に惹きつけられた。名前はSERAとクレジットされていたので『セラ』と読むのだろう。29歳だということはわかったけれど、国籍や出身地がまったく不明。すでに数曲リリースしていて、アルバムはまだという状態。
そんなSERAが昨日になって新曲のミュージックビデオを公開した。『Head Held High』というタイトル。近いうちにブレイクする予感が伝わってくるアーティストなので、記念にリンクを貼っておこう。
さて、とても興味深い小説を読んだ。高齢化社会における理想的な街づくりの過程を描いた物語。これからのモデルケースとして参考になる作品だと思う。
2023年 読書#16
『プラチナタウン』楡周平 著という小説。いきなり冒頭から引き込まれる内容だった。主人公は大手商社の四井商事の部長である山崎鉄郎。おそらく三井がモデルなんだろう。やり手商社マンの山崎だが、うっかりとミスを犯してしまう。
大手商社にも縁故入社というものがある。山崎の上司関連でどうしようもない学生が面接にやってきた。ちょっとした手違いで山崎はその学生が縁故だと気づかなかった。当然ながら落とした。そのことを恨まれて、左遷されてしまいそうになった。
そんなとき、故郷である東北の緑原町の友人が、山崎に頼みがあると言って上京してきた。なんと町長に立候補してほしいとのこと。町は杜撰な公共事業で借金が膨れ上がり、このままでは数年で財政再建団体になってしまう。故郷の町を救うために立ち上がってほしいという願いだった。
このまま会社にいても未来はない。そこで山崎は立候補する。といっても対抗馬はない。そんな町の町長をやりたい人間などいない。無投票で当選した山崎は町の実態を知って愕然とする。手につけようのない状況だった。
ところがあることがきっかけで、誰も考えなかった奇策を思いつく。企業の工場を誘致する予定で整地された広大な土地があった。そこを利用しようという方法。その奇策とは老人施設を中心にした巨大テーマパークタウンの建設だった。それが『プラチナタウン』と呼ばれることになる。
土地を無償で古巣の四井商事に提供する。どうせ使っていなかったんだからね。それで都会のリタイア層を対象にした施設を作ることになった。永住を目的とした施設で、都会の自宅を売却して老後を過ごすことができるもの。周辺には自然もあるし、遊興施設も作る。
さらに老人介護には介護士たちも必要になる。若い人たちがずっと働ける環境を提供することで、町の人口を一気に増やそうとする計画。この過程が描かれた内容で、最初から最後まで本当に面白かった。
もちろんすんなりとはいかない。古くからの議員や利権がらみの問題があって、地方ならではの抵抗が山崎町長を待っていた。だけどそんな抵抗が続かないほど、日本の高齢化社会は問題を抱えている。だからモデルケースとして日本中が注目することで、この事業が成功を収めるというラストだった。
現実世界でこの小説のようなタウンを作ることは難しいかも。だけど決して無理だとは思えない。理想社会を描いた小説として、貴重な洞察を与えてくれる物語だった。
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