核戦争を防いだ実在の一般人
今月の11日、イギリスでブリット・アウォーズという音楽祭があった。毎年開催されていて、イギリスのグラミー賞のようなもの。イギリス好きのボクは毎年この音楽祭を注目している。今回気になっていたのは新人賞。
ボクが応援しているリナ・サワヤマとミミ・ウェッブがノミネートされていたから。二人のどちらかが最優秀新人賞を受賞してくれたらと願っていた。だけど受賞したのはWet Legというバンド。女性二人がメインとなっていて、男性3人がサポートしている。
ボクとしたことが、このWet Legについてあまり知らなかった。気がついたら複数ノミネートされていて、結果として最優秀新人賞と最優秀グループ賞を受賞。こうなったら聴いてみるしかない。それで先日から昨年にリリースされたこのバンドのデビューアルバムを聴いている。
これが何とも言えない不思議なバンド。基本はロックなんだけれど、何となく懐かしくて変わっている。新しいものと古いものが共存していて、これまでになかった雰囲気を持っているバンドだった。すっかり気に入ってしまったので、もっと聞き込んでみようと思う。
ということで記念にデビューシングルをリンクしておこう。先日のブリット・アウォーズでの生演奏も良かったけれど、とりあえずミュージックビデオを貼っておく。『Chaise Longue』というタイトル。
さて、1960年代に核戦争を防いだ一般人を描いた映画を観た。ボクはこんな人がいたのを初めて知った。
2023年 映画#26
『クーリエ:最高機密の運び屋』(原題:The Courier)という2020年のイギリス映画。先ほどのミュージシャン関連で、映画もイギリス作品。その一般人とはウィンというビジネスマン。電気技師で東欧を相手に商売をしていた。演じているのは写真のベネディクト・カンバーバッチ。
核戦争の危険とは、1962年に起きたキューバ危機のこと。ソ連がキューバに核ミサイルを配備していた。そのことを知ったケネディ大統領は、もし西側諸国にミサイルを撃てば、アメリカへの攻撃とみなして報復すると宣言した。ソ連のフルシチョフも同様の発言で挑発してきた。
最終的にソ連のミサイル基地の撮影に成功したアメリカ政府がソ連と交渉。もう少しでミサイル警報が出るという期限ギリギリの段階にまで至った。でもトルコに配備したアメリカの核ミサイルを撤去するという条件で紛争が回避された。『13デイズ』という映画を観れば、この交渉が本当に危機一髪だったことがわかる。
その映画の冒頭に登場したのが、ソ連のミサイル基地の情報を手に入れたCIAの極秘資料。それがなければキューバ危機は回避できなかった、その極秘資料を西側諸国に運んだのがウィルというビジネスマンだった。
情報を流そうとしたのはペンコフスキーというソ連の大佐。フルシチョフが暴走することが現実味を帯びてきたことで、核戦争を回避するために情報を提供したいと申し入れてきた。ところがソ連に CIAが潜入することは難しい。素人の方が怪しまれないと判断した。
そこでイギリスの MI6の強力でウィンに白羽の矢が立った。ソ連でビジネスを始めるという名目で入国させた。最初は連絡を取り合うだけだったが、ペンコフスキーがウィンを気に入り、常用の運び屋として指名してきた。
ウィンは妻にスパイをしていることを言えず、浮気をしている疑われて家庭は崩壊寸前。それでも命をかけて情報を何度も持ち帰った。ところがCIAにもソ連のスパイが入り込んでいる。それでウインとペンコフスキーは疑われることになった。
ウインが勇気を出したのは、ペンコフスキーとの友情があったから。彼の家族を亡命させることを条件にしてCIAに協力してきた。ところがバレそうになったことでペンコフスキー救出作戦が決行された。このシーンは緊張の連続で、結果として失敗してしまう。
ウィンはKGBに逮捕された拷問を受けた。そして人質交換で解放されるまで収容所に閉じ込められていた。この時に激痩せしたが、カンバーバッチは実際に体重を10キロ減らすことで演技にのぞんでいたらしい。残念ながらペンコフスキーは処刑されてしまう。
映画としては二人の友情物語。だけど彼らの勇気がなければ、世界は核戦争で滅亡していたかもしれない。釈放されたばかりのウインの映像がエンドロールで流れていて、カンバーバッチにそっくりだった。脚色はされているだろうけれど、実話に基づいた素晴らしい作品だった。
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