電子書籍と図書館の在り方
ボクは図書館のヘビーユーザー。1年で少なくとも100冊の本を読んでいるけれど、その多くは図書館を利用している。読みたい本を好き放題に買えるほど金銭的な余裕はないから。だから図書館には感謝している。
その一方で自分の本を出版した立場でもあるので、図書館による書籍売上の影響を懸念する出版社の主張も理解できる。著者としても印税収入に関わってくるので無視できない。人気のある新刊を大量に購入する図書館のやり方には疑問を持っている。
双方の立場を考慮するのなら、同じ本を図書館が所蔵することに数の制限を設けてもいいと思う。そのことによって資料保存という図書館の目的も果たせる。図書館の利用者としては順番待ちを余儀なくされるけれど、それは無料で読めることの対価として捉えるべき。すぐにでも読みたい人は、書店で購入するようになるだろう。このバランスが、現状における妥協点だと感じる。
ただし電子書籍の場合は事情が異なってくる。神戸市図書館も電子書籍の貸し出しを行なっている。ボクはまだ利用したことがないので、詳しいシステムを把握しているわけじゃない。ざっと見た雰囲気では、紙の本と同じように貸出期間が決められていた。
ところが海外に目を向けると、大量の電子書籍を扱った図書館が出版社と揉めている。その記事を読んだ限り、ボクは出版社の主張は当然だと思った。
大手出版社に著作権侵害で訴えられた電子図書館が「すべての図書館の将来を脅かす訴訟だ」と主張して支持を求める
リンク先の記事を読むと、大手出版社が電子図書館を訴えたのは理解できる。その図書館とはNational Emergency Libraryという名前で、インターネットアーカイブという非営利組織が運営している。ボクもネットでこの図書館がオープンしたのを目にしたことがある。
140万冊の電子書籍が無料で読める。一般の図書館のように待ち時間もない。電子書籍だからいつでも読むことができる。紙の本もスキャンすることでデータ化されているそう。つまり読みたい本があれば、書店で購入する必要がない。一度に大勢の人が読むことが可能だから。これはさすがにあかんと思う。
資料を後代に保存していくという図書館の使命から逸脱している。1冊の本が完成するまで、どれだけの人が努力を重ねているかを無視した行為。日本の場合だと著者、編集者、営業、印刷会社、製本会社、運送会社、取次会社、そして書店という流れを得て、ようやく読者の元に本が届く。本の再版制度が陳腐化しているのは認めるけれど、とにかく本の完成には多くの人が関わっている。
なのにそれらの本をスキャンしただけで無料公開するのはおかしい。「要するに、被告は出版社が本に対して行った投資を利用するだけであり、他の人が設計した仕事にタダ乗りしています」と主張している出版社の意見に同意する。
インターネットアーカイブは、自分たちの主張に同意する意見をネットで求めているそう。この動き自体はいいと思う。電子書籍時代となったことで、これからの図書館の在り方を議論する貴重な機会だと思うから。
とにかく著者、そして版元が無料公開を許可しない限り、一方的に書籍をスキャンして配布するのは問題だと思う。少なくと無条件での貸し出しを制限して欲しい。無料で読む人には『待つ』という負担を課すべきだと思う。
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