子供に必要な心の養分
昨日に寒冷前線が通りすぎて肌寒いものの、久しぶりに青空が気持ちいい今日の神戸。でも昨日の雨で、ほぼソメイヨシノは終わってしまった。その代わり色々な花が次々と咲いているし、何よりも木々の緑が若い色で輝いている。冬の間に愛想のなかった六甲山は、まもなく美しい新緑に染まるだろう。
春は若い命が育つ季節。そういう意味で言えば、人間にとっての春は少年から青年に至るころだろう。ボクなんかすでに冬に突入しているからなぁwww
さて、そんな人生の春の時代、子供たちに必要な心の養分があると思う。それがどのようなものであるかを教えてくれる映画を観た。
2023年 映画#59
『僕を育ててくれたテンダー・バー』(原題:The Tender Bar)という2021年のアメリカ映画。監督はジョージ・クルーニーで主演はベン・アフレック。ボクのようにこの二人のファンにすれば、よだれが出るような美味しそうな作品。まさにその期待通りだった。
原作はJ・R・モーリンガーという作家の自伝。だからある程度は真実に基づいた物語なのだろう。J・Rの父はラジオのDJをしているが、どうしようもない男で家を出てしまった。生活に困った母と幼いJ・Rの二人は、母の実家で暮らすことになった。
そこには母の両親にあたる祖父母と、叔父のチャーリーが暮らしていた。叔父はその街でバーを経営している。だからタイトルが『デンダー・バー』となっている。J・Rの名前の由来はジュニア。つまり父親のことをどうしても意識する名前だった。なのに父はいない。
そんなJ・Rの父親代わりとなったのがチャーリーだった。このチャーリーをベン・アフレックが演じている。この叔父が本当に素晴らしい。決して柄の良くない雰囲気なんだけれど、甥に男としての生き方を必死で教えようとしていた。さらにバーの常連たちがチャーリーに輪をかけて素敵な人たちばかり。言葉は乱暴だけれど心が温かい。
J・Rの本好きを知ったチャーリーは次々と彼に本を読ませる。彼の経営しているバーの名前は『ディケンズ』で、バーにはディケンズの小説がどっさりと置いてある。そしてJ・Rの文才を確信したチャーリーは、将来は作家になれると言い切る。そうしていつもJ・Rの可能性を信じて自信を持たせようとしていた。
映画としてはJ・Rの少年時代からイェール大学に進学して、大失恋をしたのち、父親との関係に心の決着をつけて叔父の暮らす街を離れるところで終わる。ストーリーとしては青春映画という内容で、取り立てて素晴らしいものではない。
だけどベン・アフレックの演技に最初から最後まで惹きつけられた。こんな心優しく愛の深いベンを観たのは初めてかも。とにかくカッコいい。J・Rが学校でいい成績を取ったり、イェール大学に合格したり、成人したり、就職が決まったりという機会のたび、全身全霊で甥を祝う。そしてバーの常連たちも一緒になってJ・Rを讃える。そんな彼らを見ているだけで、こちらまで心がポカポカになってくる。
J・Rの青年時代を演じたタイ・シェルダンは、ボクが若手の俳優で以前から注目している人。この映画でも素晴らしい演技を見せてくれた。さらに祖父役のクリストファー・ロイド、母役のリリー・レーブも最高だった。
周囲の大人から目一杯の心の栄養を得たJ・Rが、この先に有意義な人生を送ることを信じられる。子供たちに必要なのは、こうした心の栄養なんだろう。地味だけれど、とても素敵な作品だった
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