『雀百まで踊り忘れず』泥棒版
『雀百まで踊り忘れず』という言葉がある。幼いころや青年時代の習慣は、年齢を重ねても抜けないという意味。どちらかと言えばあまりいい意味で使われない言葉。道楽等の悪習慣が抜けない人を指すことが多いかな。
別の言葉では、「三子の魂百まで』というものもある。こちらの方が、ポジティブな意味で使われることが多い。まぁいい意味でも悪い意味でも、人間が一度身につけた習慣や癖は、なかなか抜けないということ。
これは泥棒のようなことでも同じらしく、イギリスで実際に起きた事件を映画化した作品を観た。
2023年 映画#63
『キング・オブ・シーヴズ』(原題:King of Thieves)という2018年のイギリス映画。ボクの大好きなイギリス映画で、マイケル・ケインを筆頭としてベテランのイギリス俳優たちが出演している。それだけでも楽しめる作品だった。
これは2015年に実際に起きたハットンガーデンという宝石街の貸金庫が襲われた事件を映画化したもの。2018年に映画として公開されているので、かなり早い段階で映画化の構想が決まっていたのだろう。
この事件がユニークなのは老人の集団だったから。6人の老人と1人の若者が実行犯。強盗を持ちかけたのはバジルという若い電気技師。貸金庫に多額の現金や宝石が預けられている。その隣の建物に侵入できる鍵を持っていて、壁を打ち抜けば中身を奪えると持ちかけた。
最初に話を聞いたのがマイケル・ケインが演じるブライアン。泥棒の前科がある男で、当然ながら血が騒ぐ。まさに『雀百まで踊り忘れず』だということ。泥棒仲間に伝えることで、実行することが決まった。老人版『オーシャンズ11』という雰囲気の映画。だけど実話だけに、かなり地味な展開だった。
最新デジタル駆使して強盗をするのではなく、壁をぶち抜いて貸金庫を襲った。笑っちゃうのは犯人たちの年齢を感じさせる演出。壁を削りながらも糖尿病のインシュリン注射をしたり、見張りの老人が眠りこけていたりという状況。
それでも計画がうまくいき、大量の宝石や現金を手にする。ただ強盗の最中から問題があった。アクの強い老人たちの集まりなので、誰もが自分勝手な行動をとる。それゆえあっという間に仲間割れして、逮捕されてしまうという結末。イギリスは防犯カメラが多いので有名だから、そのあたりの警戒も不十分だった。
逃げ切ったのは一人だけ若手だった電気技師だけ。どうやら今でも捕まっていないらしい。実話なので派手な強盗劇は期待できない。だけど名優たちの演技が素晴らしいので、見応えのある作品になっていた。
逮捕されるとき仲間の関係はギクシャクしていた。だけど刑務所に入っているうち、すぐに昔の仲間に戻る。先ほどの写真は逮捕されたあと法廷に出る場面だけれど、パーティーにでも行くのかと思うほど楽しげな雰囲気。さすがイギリス映画だなぁ。
ブログの更新はFacebookページとTwitterで告知しています。フォローしていただけるとうれしいです。
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。