心を動かすのは金銭だけじゃない
ボク個人では所有していないけれど、世界的なシューズメーカーのナイキに好意を持っている。それは創業者のフィル・ナイトという人物の伝記を読んだことと、彼を主人公にした映画を観たから。
フィルは神戸のオニツカというメーカーの代理店から商売を始めた。やがてNIKEというブランドを立ち上げる。そのフィル・ナイトを脇役の視点で描いた実話の映画化作品を観た。これが最高に面白い作品で、最初から最後まで興奮しっぱなしだった。
2023年 映画#73
『AIR/エア』(原題:Air)という2023年のアメリカ映画。この映画の舞台となる時代は1984年。ナイキは上場して世界に名を知られていた。陸上競技等では高いシェアで利用されていた。ところがバスケットボールの世界では最悪の状態だった
トップはコンバースで、続いてアディダスが高いシェアを占めていた。そこでナイキ創業者のフィル・ナイトは、信頼できる人物にバスケットボール部門の立て直しを命じる。それがこの映画の主人公で、ソニー・ヴァッカロというバスケオタク。
このソニーを演じているのはマット・デイモンで、CEOのフィル・ナイトを演じているのがベン・アフレック。そう、プライベートでは大親友の二人。監督はベン・アフレックで、二人は製作にも名を連ねている。これだけでこの映画が面白いと確信できる。そしてその通りだった。
まだ先月に公開されたばかりの作品なので、ネタバレはしない。ただ実話なので、結果は隠せない。ソニーが注目したのはNBA入りが決まったばかりのマイケル・ジョーダンだった。彼と専属契約を結ぶことで、その会社は多大な利益を確信できる。
この作品はナイキの『エア・ジョーダン』という世界的な人気シューズが生まれた経緯を語った物語。ナイキはこの商品でコンバースを追い越して、バスケット部門の首位を獲得した。この映画が面白いのは、マイケル・ジョーダンがナイキと契約するに至った理由。
マイケルはナイキが嫌いだった。だから最初から交渉相手に含んでいない。本命はコンバースで、続いてアディダスがチャンスを狙っていた。ナイキとは会うつもりもない、と彼のエージェントは答える。そこでソニーは戦略を変える。マイケルの交渉に影響力を持っている両親、特に母親にターゲットを絞った。
ソニーがどのようにしてマイケルと交渉できるようになったか? この映画の最初の見どころはここ。次の見どころは、ナイキのCEOであるフィル・ナイトを説得する場面。それまで複数の選手と交渉してきたナイキだけれど、金銭で勝負するにはマイケル一人に絞るしか予算が取れない。
つまり実際にプロで活躍できるかどうか、あるいは怪我で離脱するかもしれない未知の選手に、予算の全てを投じてしまうことになる。ソニーはマイケルにはその価値があると説得する。この過程も親友二人の演技に圧倒されて、永遠に観ていたい気持ちになった。
事実として、マイケルはナイキと契約する。ところがその直前に爆弾が落ちる。マイケルの母親がナイキと契約をするという連絡を入れてきた。ところが前代未聞の条件付き。今では珍しくない条件だけれど、当時では考えられないことだった。
こうなるとソニーでは決断できない。ということで再びCEOのフィルとのやり取りになる。これがどんな条件で、なぜマイケルはナイキと契約したのかについて知りたい人は、ぜひとも本編を見てほしい。絶対後悔しないほど面白い。もしかしたら来年のアカデミー候補になるのでは?
キーワードは、「人の心を動かすのは金銭だけじゃない」ということ。
それがキーワードなんだけれど、マイケルの母親はその上から攻めてくるから面白い。マット・デイモンとベン・アフレックの素晴らしい演技を超越していたのが、この母親役を演じた女優さんだったと思う。ボクが今年前半で観た最高の映画だった。
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