紙の本を読むべき理由
ボクは京都にいるとき、写真製版と印刷をやっている会社の経理を担当していたことがある。経理や財務の仕事といっても、さほど大きな会社じゃない。だから人手が足りない時は印刷物を運んだり、梱包作業をやったりもした。
それゆえ紙の本がどうしてできるかを目の当たりにしている。ボクがいた会社はDTPを使った製版だけでなく、刷版の作成から印刷までやっていた。書籍に関してはカバーや帯の印刷が多いけれど、全判の2色機もあったので本文の印刷もやっていた。
入稿したデータから製版、校正刷りを経て、本文やカバー等の印刷が終わる。たまに工場に行って様子を見ていると、なんとも言えないインクの香りにうっとりする。それらの製品が製本屋さんに回されて見本が出来上がっても、まだそのインクの香りが残っている。
完成した本を取次業者が運営している運送業者に納入して終わり。そこから全国の書店にその本が届けられる。だから書店に並んでいるすべての本は、大勢の人の手を経由してその場に至っている。ボクは自分の本が書店に並んでいるのを見た時、関わってくださった人たちに感謝の想いを込めて合掌したい気持ちだった。
電子書籍が主流になりつつある現代。だから中学生くらいになると、なぜ本を読まなければいけないか、という疑問が出てくる。ボクたちの時代と違って、情報を得る方法は多岐に渡っているから。そんな子供の疑問に答えた記事に拍手を送りたくなった。
小島よしおが「なんで本を読まないといけないの?」と聞く中1女子に伝えたい、意外な“理由”とは
質問したのは中学校1年生の女子。スマートフォンがある時代なのに、なぜ学校で紙の本を読む課題が出されるのかを質問している。
答えたのはコメディアンの小島よしおさん。彼の回答にボクは激しく同意した。
小島さんは読書家と自慢できるほどじゃないけれど、月に8冊ほどの本は読んでいるそう。そして質問に対して、まずはこう答えている。
“本を読んでいる俺、なんかかっこいいなあ!”
電子書籍だと何をしているかわからない。でも紙の本を手にしていると、見た目でかっこいい。これは意外にも、紙の本が持つメリットを象徴していると思う
さらに小島さんが述べたのは、達成感というもの。電子書籍だと読んだという事実が残るだけ。でも紙の本だと「ああ、俺これだけ読んだんだなあ」と思える。確かに分厚い本を読了すると、言葉にできない達成感を覚える。
ネットでの情報と本の違いについて、小島さんはその信頼度をあげている。書籍として出版されるにおいて、そこには大勢の人の目が注がれている。著者、編集者、校正、校閲者等の人たち。それだけに単発的なネットの情報に比べて、体系的に物事を学べるとのこと。
ネットサーフィンだと、小島さんは情報がどんどん流れていってしまうように感じるそう。だけど紙の本をめくっていると、その能動的な行為によって知識が蓄積されているように感じるとのこと。感覚的にそういう部分はあると思う。
そして最後には、書店での本との出会いについても述べられていた。ネットで本を探す場合、特定の項目で検索する。だけど書店で本を見ていると、想定外の本に出会うことがある。それまで興味のなかったことに関して、新しい道が開くかもしれない。これはボクも経験があるから、その奇跡を実感している。
現代社会は動画の時代。YouTubeやTikTokに代表する動画が世界を動かしている。だから紙の本だけでなく、電子書籍も含めて文字文化が衰退しつつある。それだけにこれからの世代の人たちにも、本の素晴らしさが伝わっていけばいいなと思う。とても素敵な記事だった。
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