馬鹿馬鹿しくて激笑い
どんなことでも中途半端はよくない。コントを見ていて最もしらけるのは、演じている人が照れているとき。どうせやるなら徹底して振り切る方が面白い。
どう考えてもB級映画の匂いがプンプンしているのに、出演者が馬鹿馬鹿しさを突き詰めていたので最高に楽しめる映画を観た。
2023年 映画#78
『ブレット・トレイン』(原題:Bullet Train)という2022年のアメリカ映画。主演は写真のブラッド・ピットで、これはラストシーン。ずっと声の出演だったサンドラ・ブロックが、最後だけ顔を見せてくれる。サンドラブロックが演じているのは、マリア・ビートルという名前。
小説ファンの人なら、この名前でピンと来るはず。この作品は伊坂幸太郎さんの『マリアビートル』という小説の映画化。ボクはこの作品も、そして前作の『グラスホッパー』も大好き。なのに作品をB級だと言ったのは、日本の小説を無理やりハリウッド作品にしているから。
原作では東北新幹線が舞台になっている。その列車内で殺し屋たちが殺し合うという物語。コメディ要素が強い作品なので、この映画もアクションコメディとして制作されている。それならアメリカの列車を舞台にすればよかったのに、大人の事情で日本の物語にしたらしい。それも東海道新幹線。東京駅を出発して、最後は京都が舞台になる。
外国の人が観る分には問題ない。ところが日本人がこの映画を観たら、とてもじゃないけれど新幹線として受容できない。この映画のような車掌も車内販売員もいない。外国人が大勢乗車していて、互いに殺し合っている。なのに駅に停車しても鉄道警察さえ登場しない。駅や街の雰囲気も異様。とにかく舞台設定がめちゃくちゃ。
一般的な映画ファンなら、この段階でこの映画から離脱するだろう。ただボクのようにパラレルワールド的な感覚で観ることができる人なら、めちゃめちゃ楽しめる作品だと思う。それは先ほども書いたように、ブラッド・ピットを始めとする俳優たちが振り切った演技を見せてくれているから。
原作のキャラをある程度踏襲していて、ストーリーもそれなりに組んである。だけど別物として観る方がいい。『マリアビートル』のコアなファンなら映画化作品として認めたくないかも。新しい映画なのでストーリーはあえて書かない。注意事項はかなりエグいことかな。
ただ本気で激笑いした。ブラッド・ピット演じるレディバグは、カーバーという殺し屋の代理としてこの列車に乗り込んだ。『運が悪い』ことを常々意識している人間で、まさに運悪く騒動に巻き込まれてしまう。それでも依頼人であるマリアビートルと電話でやりとりしながら、最後まで任務を遂行していく。
レディバグはなぜか戦いに勝ってしまう。だからどちらかと言えば、運がいい人間に思えてくる。先ほどのラストシーンでわかるように、最後まで生き残る。ちょっとした楽しみとしては、カメオ出演でチャニング・テイタムや、ライアン・レイノルズが出演していること。
悪役を演じたマイケル・シャノンは後半しか出ていないけれど存在感があったなぁ。登場人物が多くてゴチャゴチャする印象はあるけれど、伏線がきちんと張られていて、それらがスマートに回収されている。プリンスがラストに死ぬシーンでも、エンドロールできちんと説明されていたのに笑ってしまった。
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