殺人の被害者と加害者の家族
殺人事件は、加害者と被害者の関係だけで終わらない。加害者の家族、そして被害者の家族の人生も大きな影響を受ける。加害者の家族は犯罪者ではない。なのに世間の冷たい目にさらされ、住み慣れた土地を離れてしまう。
もちろん被害者の家族も、人生の計画を大きく狂わされてしまう。家族を予想もしないことで失うことはある。自然災害などでも起きる。だけど身勝手な殺人者によって家族の命を奪われたという想いは、その事実を受け入れることを阻害してしまう。
こうしたことは、以前から社会問題として取り上げられてきた。そんな殺人の被害者と加害者の家族について、鋭い切り口で踏み込んだ小説を読んだ。
2023年 読書#84
『白鳥とコウモリ』東野圭吾 著という小説。この小説はマジにすごい。というか東野さんの小説は、それがいつものことなんだけれど。絶対にネタバレできない作品なのでご安心を。結末で思い切り驚いてもらうために、物語の前提だけ紹介しておこう。
殺人の被害者:白石健介という弁護士。
逮捕された犯人:倉木達郎という高齢の男性。
倉木の自供は複雑。30年前に愛知県で殺人事件が起きた。ある男性が逮捕されたが、その男性は留置場で自殺してしまう。倉木の自供によると、その事件の犯人は自分だった。なのに自首できないことで無罪の人を死なせてしまったと後悔していた。それゆえ、自殺した男性の妻と娘に遺産を残したいと考えた。
そのことを白石に相談すると、時効になっていても自首するべきだと迫られる。もし言わないのなら、自分がその家族に話すと白石が詰め寄った。それで倉木は白石を殺したという自供。
だけど、そう簡単にはいかない。ここで登場するのが加害者と被害者の家族。
倉木和真:達郎の息子。父が2人も殺したことを信じられず、真実を突き止めようとする。
白石美令:健介の娘。過去の犯罪を明かそうとした父の行動が信じられない。達郎が嘘をついていると思い、真実を探ろうとする。
つまりこの2人は、それぞれの父の言動と行動を信じていない。何かがおかしいと感じる。この2人に触発されて、この事件の捜査を担当した五代という警視庁の刑事が関わってくるという物語。
説明はここまでにしておこう。とにかく達郎の息子も、そして健介の娘も、この事件に関する父親の行動が信じられない。そこで加害者と被害者の家族である2人が協力して真実を探ろうとする。そして隠されていた衝撃の事実が明らかになる。とにかくびっくりの連続で、さすが東野さんとしか言えない。
めちゃめちゃオススメの小説。殺人事件における被害者と加害者の家族の苦悩がありありと感じられる。そしてその苦悩が物語の終盤になって、オセロゲームのように読者を別の次元へと連れ去ってしまう。読み終えた今でもその衝撃が残っている。
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