気になる明治の空気感
おそらく今日で関西各地の猛暑日は終わるはず。神戸の最高気温は32.9度で、風もあったので過ごしやすかった。もちろん平年の時期に比べたら異常な高温なんだけれど。でも神戸がマシだったのは風のおかげかも。
京都市や兵庫県の豊岡市は38度というとんでもない最高気温。でも静岡では39度を超えたところがあったらしい。明日になると天気は下り坂で、神戸は日曜日には秋雨前線が南下して雨の予報。つまりようやく秋の空気がやってくる。
本当に今年の夏の猛暑は過酷で異常だった。おそらく明治時代の人がタイムマシーンでやってきたら驚くだろう。逆にボクとしては、明治時代の人に聞いてみたいことがある。ある小説を読んでその時代の空気感が気になった。
2024年 読書#81
『吾輩は猫である』夏目漱石 著という小説。ボクは著者の作品は高校時代の夏休みの課題だった『こころ』しか読んだことがなかった。でもさすがに一般常識として古い小説も読んでおくべきだと思い、ここ数年は青空文庫の無料配信を使って電子書籍で随時読み進めている。
ようやくこの有名な作品を読了した。小説としてはボクの好みではない。猫の視点で人間を見たという構成だけれど、要するに著者の信条や人生観が登場人物の雑談を通じて書かれている。ストーリーに一定の流れがある作品ではないので、読み進むのに苦労した。オジサンたちの井戸端会議という雰囲気www
この猫を飼っている主人の珍野苦沙弥(ちんのくしゃみ)という人物は、明らかに夏目漱石がモデル。実際に同じような猫がいたらしい。そして他の登場人物も実在のモデルがいるそう。ラストでビールを飲んだ猫が水瓶で溺れて死んでしまうのは不快だったなぁ。
ボクがこの時代について気になったのは、司馬遼太郎さんの『坂の上の雲』を並行して読んでいるから。日露戦争の軍人たちを描いた物語で、明治37年に勃発したロシアとの戦争が物語のメインテーマ。
そしてこの『吾輩は猫である』が出版されたのは日露戦争が終わる明治38年。同じ時期のことについて書かれた物語なのに、そのギャップに戸惑っている。一方は生きるか死ぬかという状況で日本のために戦っている。
なのにもう一方はお気楽に日々の生活を過ごしている。実際の明治の空気感はどんな雰囲気だったんだろう? 日清戦争に勝ったことで、日露戦争の勝利は歓喜を持って報道されただろう。ただし日清戦争のような見返りはなく、日本がその後の戦争へと突き進むきっかけとなっただけ。
一般の人たちは日露戦争をどのように見ていたのだろう? 多くの若者が死んでいるのに、『吾輩は猫である』の世界からはそんなことを少しも感じない。『坂の上の雲』の主人公の一人である正岡子規は、夏目漱石と親友だった。
そして正岡子規は海軍の参謀だった秋山真之というドラマでは本木雅弘さんが演じている人物と親友。『坂の上の雲』では正岡子規が秋山と夏目を結びつけようとしたけれど、それが叶うことなく正岡子規は亡くなってしまった。
夏目漱石にすれば、正岡子規を通じて戦争のことは詳しく聞いているような気がする。だからこそ、あえてこのような呑気な小説を書いたのだろうか? 真相はわからないけれど、この当時に生きていた人に話を聞いてみたいと思った。令和の時代になったから無理だけれどね。
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