違和感を覚えるドキュメント映画
Xでポストしたように、遅ればせながら神戸でもようやく金木犀がいい香りを放っている。季節が1ヶ月ほどずれ込んでいる印象で、今年の酷暑の影響が出ている気がする。
今日も買い物の往復でしっかりと汗をかいた。神戸の最高気温は28度を超えているので、どう考えてもまだ夏の空気。まだ明日も暑くなるらしい。バルコニーで大掃除をする予定なので、日差しで背中がカッカと熱くなるだろうなぁ。
さて、以前から気になっていた著名歌手のドキュメント映画を観た。制作された事情は知っていたので驚きはしなかった。プライベートに踏み込んだ素晴らしいドキュメントだったと思う。ただ、どうしても違和感が拭えなかった。
2024年 映画#185
『アイ・アム セリーヌ・ディオン 病との戦いの中で』(原題:I Am: Celine Dion)という2024年のカナダ映画。重い病気だと報告されていたが、今年のパリオリンピックで復活した姿を見せてくれたセリーヌ・ディオンのドキュメント映画。
彼女は2022年12月、痛みを伴う筋肉の硬直や痙攣といった症状が出る進行性の自己免疫系神経疾患「スティッフパーソン症候群」と診断されたことを明かし、その後のツアーの中止を発表した。このドキュメントを見て初めて知ったけれど、実は17年前からその兆候が出ていたそう。
どうにか薬で調節していたけれど、これ以上はファンやスタッフに迷惑をかけるということで、病気を発表してツアーの中止を決めたそう。この病気はいきなり筋肉が痙攣するので、思うように声が出せない。美しい高音域を売りにしていたセリーヌにすれば、これほどショックなことはないだろう。
だが先ほども書いたように、このドキュメントに言語化できない違和感を覚えた。ひとつはこのような映像を公開する必要があったのかどうか? 映像には病気に苦しむセリーヌの姿がありのまま撮影されている。症状が悪化して担架で運ばれるという悲惨な場面もあった。
最後まで観たけれど、途中で何度もやめようかと思った。そんな悲惨な映像を公開する意味がわからない。正直言って不快だし、世界的なスターの苦しむ姿を映像化する必要性に疑問を覚えた。セリーヌ自身が病気のことを報告しているので、それで済むことではないかと思う。
それ以外にもハッキリとしない違和感が存在している。病気で苦しむアーティストたちはこれまでもいた。レディー・ガガは繊維筋痛症という難病に苦しんでいる。原因不明の慢性的な痛みが起きる病気で、ステージの照明の灯りがきっかけになるようなこともあったそう。
アヴリル・ラヴィーンはライム病という感染症になり、一時は死を覚悟したこともあったそう。数年の闘病生活が続き、音楽業界に復帰できないのでは苦しんだ時期もあったと言っていた。
もちろんセリーヌと違い、この二人はステージに復帰して今でも第一線で活躍している。でもセリーヌの病気はそれを許してくれない。そう思うと比較するべきではないのかもしれない。でもレディー・ガガやアヴリル・ラヴィーンのインタビューを見ても、セリーヌのような違和感を覚えなかった。
ドキュメント映画をじっくり観ながらなんとなくわかったことがある。それは『怒り』の感情。勝手な想像だけれど、セリーヌのインタビューや映像には強い『怒り』が見え隠れしている気がする。なぜ自分はこんな病気になったんだ、という『怒り』が映画の全編に染み渡っていると感じた。
おそらくその「怒り」のエネルギーを感じてしまい、ボクはこのドキュメントに違和感を覚えたんだと思う。映像を見ても感じるのは、まだ50代なのに老人のように見えてしまう彼女の表情。それは病気の悲惨さを表しているだけでなく、彼女の「怒り」が表面化しているような気がした。
ボクの個人的な感想だけれど、ドキュメント作品としてはあまりいい評価ができない作品だった。
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