ビビり過ぎるロシア司令官たち
今日も昨日に引き続き気温が低めで過ごしやすい1日だった。買い物に出てリュックでお米を背負って帰ってきたけれど、夏のように汗びっしょりになることがなかった。といっても平年より気温が高く、ボクも半袖で外出だけれどね。まだまだ長袖の出番は先になりそう。
さて、シリーズで追いかけている小説も終わりが近づいてきた。こうなってくると名残惜しくなってしまう。
2024年 読書#89
『坂の上の雲 五』司馬遼太郎 著という小説。明治維新後から日露戦争にかけて、ようやく『国』として日本が一人立ちしていくまでを描いた作品。未読だったこの小説を読もうと図書館で取り寄せたと同時に、過去に制作されたNHKドラマの再放送が決まってかなり驚いた。タイミングが良過ぎるよね。
昨日放送されたドラマは、いよいよ日清戦争が始まったところ。主人公の一人である陸軍の秋山好古は騎兵隊を指揮して戦地に立っている。弟である海軍の秋山真之は本格的な参戦はしていない時期。
でも小説はいよいよ日露戦争の終結を迎えている。単行本で全6巻という構成なので、この作品がラスト前になるから。今回の物語のメインは日露戦争の最後の陸戦となった奉天会戦。結果として日本が勝ったけれど、なんとも言えない不可解な戦争だった。
そもそもロシアの司令官たちは異常なくらいビビってばかり。世界一と言われるロシアのバルチック艦隊を率いるロジェストウェンスキーは、日本の戦艦がヨーロッパまで来るかもしれないと恐れていた。そんな調子でグズグズしていたものだから、日本海軍は旅順を拠点としていたロシアの艦隊をほぼ全滅させてから、日本へ戻って戦艦等の修理をする時間が取れた。この戦いについては第6巻で詳しく描かれているだろう。
そして今回の奉天会戦を指揮したロシアの司令官はクロパトキン。彼はこれまでに何度も日本陸軍を壊滅させるチャンスがあった。なのに突然退却したり、ライバルが戦功をあげることを恐れて消極的な行動に出ている。
今回の奉天会戦でも日本予備軍の配備位置が読めないことにビビっていた。ところが日本陸軍は兵も弾薬も、そして資金も尽きていて、予備軍などおく余裕が全くない。なのにクロパトキンはどこかに予備軍が隠れていると警戒していた。
さらに自分勝手な誤解で、旅順から移動した乃木軍が自分たちの背後に回り込むと考えてコロコロと戦略を変えている。もう少し粘れば日本軍は降参するしかなかったのに、意味不明の退却を始めてしまった。
日本軍というのは「前へ進む」ことしか考えない。ところがロシア軍は万が一に負けたことを考えて退却の計画も立てている。だかビビりの司令官は、戦況を誤解してすぐに退却してしまう。クロパトキンは戦後に「退却将軍」と呼ばれていたそう。
この小説を読んでいると、ロシアは負けるべくして負けている。その元凶は皇帝による専制政治だろう。指揮系統が皇帝からの流れなので、日本のように軍の参謀たちが合議をして作戦を立てない。そしてロシア国内では共産主義者による革命の動きが激しかった。
やがてソ連となるための布石は打たれていて、帝政ロシアはそもそも風前の灯だったということ。驚いたのは、日本陸軍はヨーロッパに明石という人物を工作員として送り込んでいる。明石に100万円を持たせて自由に使わせた。目的はロシアの革命を扇動すること。
そんな秘密工作も効果があったし、イギリスとの同盟は日本軍を支えてきた。でもロシアは自滅したというのが歴史的な解釈として正しいのかもしれない。さて、残りは最終巻だけになった。近いうちに読了して、ドラマでその感動を追体験しようと思う。
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