浅野内匠頭が斬りつけた理由
昨日の天気予報では曇りだった。でも神戸は朝から快晴で、結果としてほぼ晴れと言っていい天気だった。その分気温も上がり、今日は25度を超えて夏日を記録している。もう11月も近いというのにね。
それでも今日は衆議院選挙の投票日なので、この晴天が少しでも投票率のアップに貢献してくれたらと思う。今夜の8時になれば次々と日本中の結果が報道されるだろう。これからの日本の未来を左右する選挙結果なので注目したいと思う。
一つだけ選挙の影響で残念なのは、毎週日曜日の夜に再放送されているNHKドラマの『坂の上の雲』がお休みになったこと。大河ドラマの『光る君へ』は時間を早めて放送されるけれど、『坂の上の雲』までは無理だったね。明日からは原作の最終巻を読む予定なので、来週までは原作でこの物語の世界を楽しもう。
この『光る君へ』も『坂の上の雲』も過去の歴史で起きた事実から物語として構成されている。同じく江戸時代に起きた有名な事件に関する小説を読んだ。
その事件とは、赤穂藩の藩主である浅野内匠頭が吉良上野介を江戸城内で斬りつけたという刃傷事件。この出来事に関してユニークな視点で描かれた小説だった。
2024年 読書#92
『あの日、松の廊下で』白蔵 盈太 著という小説。読みやすい文体で書かれた小説で、最後まで面白く読むことができた。
主人公はこの事件の唯一の目撃者だった梶川与惣兵衛という旗本。現代でいえば外務省の役人のような立場で、朝廷からの使節饗応をスムーズに進めるための裏方的な存在。吉良上野介に斬りつけた浅野内匠頭を必死で止めて、「ここは殿中でござる!」と叫んだ人物。
史実かどうかは別として、この梶川の視点で語られる事件の内幕はなかなか興味深い。通常は喧嘩した当事者たちがトラブルとなるに至った事情が語られる。でも物語の始まりとして、浅野内匠頭と吉良上野介の関係は極めて良好だった。
この物語で問題視されているのは、吉良上野介以外の指南役と赤穂藩の江戸家老の行動。浅野内匠頭に指南役の謝礼が少ないと苦情を言ったのは別の指南役だった。さらに赤穂藩の江戸家老は藩の財政が厳しいことで饗応の予算を勝手に減らしていた。このいい加減な二人がトラブルメーカーとして描かれている。
吉良上野介は本来なら江戸にいるはずだった。ところが将軍である徳川綱吉の母を従一位にするようにという柳沢吉保の密命を受けていた。それゆえ吉良は京都を離れることができず、饗応役の指南を他の指南役に任せるしかなかった。そこで微妙な行き違いが生じてきた。
小さなほころびが、時間が経つほどに広がっていき、やがて取り返しのつかないことになっていく。その結果として、刃傷事件という最悪の事態が発生してしまった。
史実はどうかは別として、さもありなん、と納得できる事件の裏側だった。コメディ的要素もあるのでソフトな時代小説として楽しめる作品だった。
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