戦争礼讃ではない名作小説
3連休の最終日は見事な秋晴れだった。ボクはいつもと変わらない生活。でも買い物に行く途中、阪急六甲駅の六甲ケーブル下行きのバス停には長蛇の列ができていた。臨時バスも次々と出されていて大勢の観光客が到着したバスに飲み込まれていった。JR六甲道駅のバスターミナルも同じ状況で、市バスの職員の人たちが制服姿で乗客を誘導されていた。
平年より気温が高めで、本当に快適な気候だものね。六甲山に上がる人が多いのはわかる。紅葉にはまだ早いので、もう少しして大掃除が終わった頃にはボクも近所を散歩して秋を満喫しようと思っている。
さて、今年の夏から読み始めたシリーズ作を読了した。日露戦争を扱った名作小説。出版当時には戦争礼賛であると揶揄する声があったそうだけれど、それはこの作品を読んでいない人の言葉だろう。むしろ戦争がどれほど愚かなことなのかを語った物語だった。
2024年 読書#94
『坂の上の雲 六』司馬遼太郎 著という小説。以前から気になっていた作品で未読だった。今年の夏になって急に読もうと思い本を手にした。その直後にNHKのドラマが再放送されることが決まり、ドラマと小説の二本立てで楽しんできた。
ドラマの昨日の放送は日清戦争が終わったところ。3人の主人公のうち陸軍の秋山好古はこれから騎兵隊の基礎を築いていく。弟の秋山真之は海外留学をすることで、日露戦争に向けた作戦の地盤を固めていく。そして正岡子規は次回のドラマでは結核による死を迎えることになるだろう。
小説の最終巻はドラマの10年ほど先の未来。第5巻では日本陸軍はロシアとの奉天会戦によってかろうじて勝利を得た。この段階で日本政府はロシアとの講和の仲介をアメリカ等に依頼したけれど、ロシア皇帝のニコライ2世は拒否。
なぜならまだロシア陸軍は十分に戦える余力がある。さらにバルチック艦隊が日本海軍を殲滅するために日本海へと向かっていた。一方日本陸軍は兵士も弾薬も、そして資金も尽きていた。ロシアとの講和を成立させるためには、日本の連合艦隊がバルチック艦隊に勝つしかない。それも全滅させなくてはいけない。
例え一隻もでロシアの戦艦がウラジオストックに入港すれば、日本海の制海権を奪われて満州の陸軍が孤立してしまうから。連合艦隊司令官の東郷平八郎に課せられた使命はバルチック艦隊を全て日本海に沈めること。
もちろん結果は歴史が証明している。海軍の参謀である秋山真之が作戦を立案し、その計画通りにバルチック艦隊は事実上全滅した。ロシアは負けるべくして負けたという感じ。結局はバルチック艦隊の司令官であるロジェストウェンスキーの戦略ミスによる自滅という内容だった。
武士が「藩」という組織にとらわれ、日本人という意識が存在していなかった江戸時代。そこからわずか40年足らずで日本が大国であるロシアに負けなかったことは素晴らしい。もし負けていたら、日本はロシアの植民地のようになっていただろう。日本人として誇りに思っていいことだと思う。
けれども最初に書いたように、この小説の目的は戦争礼賛ではない。むしろ戦争の悲惨さが克明に描かれている。ギリギリでの日本の勝利にはとてつもない数の犠牲があってのこと。そしてこの日本軍の勝利が満州支配への利権を産み、結果として大東亜戦争の引き金になっている。
この小説を読んで、学校の歴史では簡単に語られている日露戦争について詳しく知ることができた。さて、あとはドラマを最終回まで楽しもう。日本の著名俳優の全てが出ているのでは?と思うほどの豪華キャストだからね。
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