妖怪だって孤独は辛い
何か文章を書こうとしても、今は暗鬱な気持ちをどうしても振り払えない。あらゆる手を尽くしたけれど、現状では旅立ちの準備を進めているミューナを応援してあげることしかできない。とにかくボクの負の感情が暴走しないよう、全力で心のバランスを保っている日々。
今のボクができることは、辛い現実から目を背けずにミューナのそばにいること。どんなことがあっても一緒にいることを行動で示すしかない。リビングで一緒に夜を明かすときも、ミューナが寂しい思いをしないように意識している。買い物に出かける日も、できるだけ最短コースで戻って自宅にいるようにしている。
体調が思うようにならず不安になったとき、最も辛いのは孤独だと思うから。そんなことを日々考えているせいか、ある小説の登場人物に感情移入してしまった。妖怪だって孤独は辛いんだろうなぁ。
2024年 読書#98
『いつまで』畠中恵 著という小説。2001年から単行本が刊行されている『しゃばけ』シリーズの作品。1作目を読んでからこの物語のファンになり、ずっと新作を追いかけている。この作品は昨年の7月に刊行された第22作目の物語。今年の7月には最新作の第23作目が出版されている。
人気作品なので図書館での予約を待っていると1年以上かかってしまう。ようやく順番が回ってきて、昨年の作品を読むことができた。主人公は一太郎という、廻船問屋と薬種問屋を兼業している長崎屋の跡取り息子。
祖母は力のある妖怪なので、一太郎も妖怪の血を引いている。それゆえ彼の周囲には次々と妖怪たちが暮らすようになり、一太郎と妖怪たちとの友情が描かれている物語。優しくて頭のいい一太郎だけれど、身体が弱くで病気がち。それゆえ妖怪たちが一太郎を支えようとしている。
巻を重ねるごとにレギュラー化していく妖怪が増えていく。そして一太郎ファミリーとして彼を支えるようになる。そんな噂を聞きつけて、西日本からある妖怪が江戸へやってきた。それがタイトルの『いつまで』という妖怪で、『以津真天』と漢字で書く。
今回のトラブルの原因はこの以津真天によるもの。いつも楽しそうにしている長崎屋の妖怪たちに嫉妬した。それである悪事を思いついたことで、一太郎が巻き込まれてしまう。なんと時代小説なのに、タイムトラベルとパラレルワールドが登場する。
一太郎が落ちてしまった世界は5年後の江戸だった。跡取りの一太郎が5年前に行方不明となったことで長崎屋は廃業寸前。一太郎の許嫁である於りんとの結婚も白紙になった。完全に歯車が狂ってしまった5年度の世界。どうにかして5年前に戻らなければ誰もが不幸になってしまう。
ということで一太郎が5年前の世界に戻る顛末が書かれた物語。いつもは複数の短編が収録された構成が多いけれど、今回は久しぶりの長編小説。なぜ『5年後』だったのかという必然も含めて、本当によくできた物語だった。やっぱりこのシリーズは本当に面白い。さて、今年の最新刊はいつ読めるのだろうなぁ?
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