500年後の名誉回復
ミューナの看取り状態が継続中。夕方になると寂しくなるらしく、その時間はすぐに呼ばれてしまう。だから夕方のブログがなかなか書けない。でも午前中は眠っていることが多いので、今のうちに簡単なブログを書いている。
今日も映画の鑑賞記録。ボクの好きなイギリス映画で、ファンタジー感もあってとても素晴らしい作品だった。
2024年 映画#206
『ロスト・キング 500年越しの運命』(原題:The Lost King)という2022年のイギリス映画。実話を元にした作品で、イギリスの歴史を知っている人にはかなり面白い内容だと思う。
その前提となる歴史は15世紀の終わりにイングランド王だったリチャード3世の物語。歴史的には王位を継承するため二人の甥を殺し、王位を簒奪した非道な王として知られていた。それゆえ正式なイギリス王として認定されていなかった。そして遺体は行方不明で、通説としてはソアー川に捨てられたと考えられていた。
リチャード3世の悪名を定着させたのはシェイクスピア。歴史というのは権力者によって捏造される。リチャード3世を殺して王位を継承した王朝が、彼の悪評を捏造した可能性が高い。それは日本の歴史でも同じ。そしてそれを事実としてシェイクスピアが戯曲化したものだから、リチャード3世は悪役の代表のようになってしまった。
この物語の主人公はフィリッパ・ラングレーという中年女性。シェイクスピアの『リチャード3世』の芝居を鑑賞した時に疑問を覚えた。リチャード3世は背中にコブがある異形をしていたと伝えられている。フィリッパは難病にかかっていたことで仕事のキャリアを奪われていた。だからリチャード3世に同情するようになり彼のことを調べ始める。
結論として全くの素人だったフィリッパが、リチャード3世の遺骨を発見したという実話に基づいた物語。最初はバカにされて誰にも相手にされなかった。それでもクラウドファンディング等で資金を調達して、本当にリチャード3世の遺骨を見つけ出した。その途端、協力していたレスター大学が手のひらを返した。
フィリッパの業績を横取りして、DNA鑑定でリチャード3世だと確認。フィリッパは話題の中心から弾きされてしまう。けれどレスター大学は遺骨の発見を利用するだけで、王位簒奪者としてのリチャード3世の評価を変えなかった。
でもフィリッパは諦めない。彼女の活動が功を奏して、英国王室はリチャード3世は正式な王として彼の墓に王の紋章を刻むことが許された。そして王室はフィリッパの功績を讃えて勲章を授与している。
このフィリッパを演じたのがイギリスの名女優であるサリー・ホーキンス。ボクは『パディントン』シリーズで彼女の大ファンになった。彼女の素晴らしい演技に加えて、この映画の演出が最高。リチャード3世の幻影、あるいは幽霊を登場させたから。それが先ほどの写真。
もちろんフィリッパにしかリチャード3世の姿は見えない。フィリッパがリチャード3世の幻影とやり取りしながら、彼の遺骨を見つけ、さらに名誉を回復したという構成になっている。実話にファンタジー要素を加味することで、映画としての完成度を高めたと思う。本当に素敵な作品だった。
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