拮抗する恨みと愛の深さ
昨日に引き続きほとんど雲のない晴天の神戸。明日もいい天気みたいなので、初詣等で外出する人は多いだろうと思う。我が家は特に予定がないので、今日も自宅で過ごす予定だった。
でもあまりに天気がいいので、午前中に神戸大学の方へ散歩した。冬休みなので大学はひっそりとしていた。道中に馬術部の馬場があって、お正月だけれど馬に乗って練習している様子が見られた。そりゃ馬にはお正月は関係ないからね。
実はその散歩はある目的があった。手探りで歩いたけれど、いい感じて情報収集することができた。頭で考えているだけではなく、実際に動くことは本当に大切。そうすることで次の展開が自ずと開けてくる。でも動かない人には、その先は見えてこない。宇宙に自分の意思を発信する唯一の方法は、具体的に動くことだと思う。
ただ宇宙への意思表示でも、自分の恨みを成就させる動きはヤバい。宇宙は作用反作用の法則で律しられているので、恨みを発すれば自分に同じエネルギーが返ってくる。そんな恐ろしい世界が描かれた小説を読んだ。
2024年 読書#113
『陰陽師 生成り姫』夢枕獏 著という小説。昨年の暮れに読了したのでカウントは2024年になっている。
『陰陽師0』の映画を観たことで、追いかけているシリーズ作品。第4弾まで読んだけれど、それらは文芸春秋社から出版された短編集だった。この作品はシリーズ初めての長編で、朝日新聞社から出版されている。
長編集といっても、過去に刊行されている短編集の物語を再構成したもの。だから結末等はわかっている。でも改めて深掘りして物語化されているので、知っていても心が激しく動かされて感動した。
基本となっているのは短編集で書かれた『鉄輪』という物語。謡曲の『鉄輪』から創作された物語で、能ではよく知られている演目。その謡曲でも安倍晴明の名前が出てくるそう。心変わりした男が許せなくて、鬼と化してしまった女性の物語になっている。
人間の恨みが高じて限界を超越すると、生きたまま鬼となってしまう。平安時代にはそう考えられていて、牙が伸びて角が生えてくる。生きたまま鬼となるのを「生成り」(なまなり)と呼ぶ。なんとも恐ろしげな言葉だよね。
生きたまま鬼となってしまった女性を安倍晴明でさえ止めることはできなかった。彼がかろうじて行ったのは恨まれている男性の命を救うこと。ところが安倍晴明の親友である源博雅は、その女性が本当の鬼となってしまうのを阻止した。
なぜなら若い頃に博雅が憧れていた女性だった。その変わり果てた姿に驚きながらも博雅はその女性への真摯な想いを伝え続けた。その行為が人間としての心の部分に響き、その女性は本当の鬼になることなく息を引き取ることができた。
女性の恨みの深さと博雅の愛の深さの拮抗が、かろうじて愛の方に傾いたというストーリー。その部分に感動して涙を流さずにはいられなかった。このシリーズは安倍晴明の人間離れした能力と、源博雅による人間としての情の深さが織りなすドラマだと思う。だから面白いし感動できる。ますます次の作品が楽しみになってきた。
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