警察権力を背景にした暴力
今日は朝から太陽が顔を見せてくれた最高の天気。1週間前は霧の深い日々が続いていたから、日光の有り難さを実感できる1日だった。最高気温も13度まで上昇したので、屋外の作業も気持ちよく済ませることができた。
今年は2月に強い寒波が来たので、梅の花が遅れ気味になっている。昨日は「ミモザの日」だったけれど、ボクの散歩道にあるミモザもいつもより開花が遅れている。例年なら満開になっているんだけれどね。
でも今日から気温が上がってくるので、これからミモザやほうき花桃、そして早咲きの桜も咲き始めるだろう。ぼちぼちウグイスの初鳴きも聞けるだろうし、ツバメも戻ってくるはず。本格的な春はもうすぐそこまで来ているよね。
さて、そんな春の楽しい気分が吹っ飛んでしまう映画を観た。実話の映画化で、警察の権力濫用を描いた作品。こんなことが実際に起きたなんて思うと、人間の心の奥にある闇を見せつけられた気がして悲しかった。
2025年 映画#39
『キリング・オブ・ケネス・チェンバレン』(原題:The Killing of Kenneth Chamberlain)という2019年のアメリカ映画。
この事件が起きたのは2011年11月19日のこと。ニューヨーク州のホワイトプレインズという場所に、黒人の貧困層が暮らすアパートがあった。実はこの前提がこの事件に欠かせない。なぜならこの街の警察官たちには、黒人の貧困層が犯罪の温床だという強い思い込みがあるから。
事件の被害に遭ったのはケネス・チェンバレンという一人暮らしの黒人の老人。ケネスは双極性障害を患っている。心臓に持病もあるのでライフ・ガードという会社と契約して医療用通報装置を身につけていた。
その日の夜、ケネスは寝ぼけてその装置を作動させてしまった。すぐにライフ・ガードから連絡が入ったけれど、ケネスは眠りこけていて電話に出られなかった。そこでライフ・ガードは警察に安否確認を依頼した。ところがやってきた警察官たちは明らかな差別主義者だった。
ノックしてケネスを叩き起こした警察官。ところが心を病んでいるケネスは、警察官を極端に恐れている。海兵隊員だったことで戦争体験によるPTSDがあったのかもしれない。ドア越しに誤報だと主張したケネス。ところが警察官はそのまま帰らない。
心を病んでいることでケネスは挙動不審になっているだけ。なのに警察は犯罪を隠していると疑い、部屋を確認させるように言い張った。けれどパニックになったケネスは徹底して拒否した。もちろん令状がないのでケネスの主張は正しい。
でも警察官たちはしつこく言いよる。ケネスからの助けの電話を受けた姪がやってきて病気のことを話すけれど、警察官たちは聞く耳を持たない。最終的に応援部隊を呼び寄せ、写真のようにケネスの家のドアを強制的に開けようとした。
ケネスはライフ・ガードに安否確認を取り消してもらうように話した。専用の端末での会話がそのまま録音されている。ライフ・ガードは取り消しを警察に申し入れたのに、現場の警官たちはいうことを聞かない。黒人に対する差別用語を叫んでいる声も録音されていた。
結果として突入した警察官たち。でも犯罪の証拠はないし、本当にケネス一人だった。なのにケネスを取り押さえた警察官。当然ながら心を病んでいるケネスは必死で抵抗する。するとなかでも強烈な差別主義者である若い警官が、銃を発砲してケネスを射殺してしまった。
なんという酷い話だろう。これがフィクションでなく実話だということに戦慄する。アメリカの警察官が、肌の色だけで一般市民を犯罪者だと決めつける事例は数えきれないほどある。怒りと絶望しか覚えない作品だけれど、こんなことが実際にあったという事実を大勢の人に知ってほしい映画だった。
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