他人を信頼できる遺伝子の発見
昨日は映画を観るため、久しぶりに電車に乗って神戸の三宮へ出かけた。といっても阪急電車に乗れば10分もかからない距離なんだけれど。車内でぼんやりと人を眺めつつ、最近になってあちこちで起きている事件を思い出した。
それはいきなり刃物を手にして見知らぬ他人を傷つけるという事件。明らかに異常者の行動なんだけれど、いつそんな人間に出くわすかわからない。怪我をした人も直前までは犯人が刃物で斬りかかるとは思ってもいなかっただろう。そんなことを想像すると、どことなく他人を信用できなくなる。
でも同時に心の奥では、他人を信頼するという部分も存在している。実は人間の遺伝子には、人に信じる心を与えるものがあるそう。
リンク先の記事は、デンマークのコペンハーゲン大学の研究チームが発表した結果をまとめたもの。それによると、見知らぬ人を信じる力を与えてくれる「信頼遺伝子(PLPP4)」の存在が明らかになったとのこと。
この遺伝子の研究のため、3万人以上のデンマーク人の遺伝子が分析された。例えば街を歩いていて、いきなり知らない人に電車賃を貸して欲しいと頼まれたとしよう。普通は困惑するし、断る人がほとんどだろう。日本なら交番に行くように勧める人が多いかも。
でもその人を信頼してお金を貸そうと思う人もいるかもしれない。それは他人に騙されるかもしれないという恐れや恐怖に打ち勝つことが必要。その勇気に影響するのがこの信頼遺伝子だとわかったらしい。
この信頼遺伝子の影響力は6%程度とのこと。意外に少ないと思うだろうけれど、学術的にはかなり大きな数字になる。記事から抜粋してみよう。
『人間の体格差に大きな影響を与える遺伝子として「FTO」と呼ばれる遺伝子がよく引き合いに出されますが、この遺伝子がもたらす差はわずか0.34%に過ぎません。身長や体重といった物理的特性よりも遥かに複雑な「信じる力」が、たった1つの遺伝子によって6%も上下しているという結果は、驚異的とも言えるでしょう』
この信頼遺伝子の働きとしては、「闘争・逃走システム」の働きを和らげる効果があることがわかった。人間は恐怖を覚えた場合、戦うか逃げるかを選択する。でもこの信頼遺伝子が強い人は、その本能的なシステムを抑制するそう。だから相手を信用してみようという気持ちが働く。
要するに信頼遺伝子には他人に対するストレスレベルを下げる効果があって、見知らぬ人への信頼が強い人は、神経症・抑うつ症状・うつ病・ADHDなどになる傾向が低くなっているとのこと。この遺伝子を活性化する薬が開発されたなら、そうした心の病気に効果が出るかもしれない。
ただやはりバランスが大切だと思う。無警戒に他人を信用すれば、残念ながら痛い目に遭うのが現代社会。リスクを避けるためには警戒心が必要だと思う。だけど心のどこかで他人を信頼する遺伝子が人間には仕込まれている。なんとなくだけれど、そこには神様あるいは宇宙の意図のようなものを感じるなぁ。
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