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高羽そらさんインタビュー

財布がしゃべると、こうなる

今朝も神戸の朝は、薄い雪化粧でした。でも昨日に比べて青空の時間が多いですし、風も比較的おだやかでした。歩いていると空気は冷たかったですけれどね。

 

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耳が痛くなるほどの冷たい寒波の真っ最中ですが、この写真のように梅があちこちで開花しています。散歩していると、なんとも言えない素敵な香りに立ち止まってしまいます。そして見上げると、可愛い梅の花が咲いているという具合です。

 

桜の花も大好きですが、負けないくらい梅の花も好きです。まだまだ本格的な冬はこれからですが、同時に春もやってきているのを感じます。どこに視点を置くかによって、風景がちがって見えるので不思議ですね。

 

さて、昨晩に読了した本です。

 

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『長い長い殺人』宮部みゆき 著という本です。

 

少しずつですが、宮部さんの作品を追っかけています。多作な作家ですので、まだまだ未読の作品ばかりですが。この小説は、物語を書く人はぜひ読むべき作品です。あるいは漫画家さんのように、創作活動をしている方にも勉強になると思います。

 

ストーリー構成はそれほど複雑ではありません。ただし、犯人は最後までわからないですよ。それはそういう構成になっているからで、犯人探しを目的としたミステリーではないからです。

 

この小説がユニークなのは、11の章に分かれた短編になっていて、それぞれが一人称で書かれています。つまり「私」や「僕」や「俺」が語り手になるわけです。でもその章によって語り手が変わります。

 

でも驚くなかれ、その語り手は人間ではありません。

 

財布なので〜〜〜す!

 

内容をまったく知らずに読み始めてびっくり。猫や犬が語り手なら驚きません。でも財布ですよ。財布が自分の持ち主やその周囲について語るという構成になっています。

 

考えてみれば、財布というのは持ち主の人間性を投影したものです。財布といってもピンキリですから、ブランド品の高級な商品から、千円くらいで投げ売りされているような財布もあります。見た目だけでも持ち主のキャラを感じます。

 

さらに財布の中身は、もっと多くを語っています。整理整頓しているかどうか。裕福かどうか。名刺が乱雑に放り込まれていたり、誰かに見られたら困るような物も入っているかもしれません。

 

そのような個人のキャラを特定できる要素を、財布自らが語るわけです。人間に対する高い観察力と文章力が要求される手法だと思います。かなり古い作品ですが、宮部さんという作家のすごさがわかる物語です。

 

刑事、強請屋、少年、探偵、目撃者、死者、旧友、証人、部下、犯人、そして再び刑事、という11の章にわたって財布が語ります。ラスト前で犯人の財布が出てきますから、この段階でようやく犯人がわかるという構成です。だって犯人は、殺人の記念品を財布に残していたわけですからね。

 

物語は保険金殺人として始まります。それもよくありがちな交換殺人です。ダブル不倫をしている二人が、それぞれの夫と妻を殺すという方法です。さらにそのことに疑う身近な人たちも殺されていきます。でも動機のある人間が実行犯ではありませんから、二人はアリバイをそれぞれ持っています。

 

ところが交換殺人は見せかけでした。この二人の目的は保険金ではなく、有名になることだったのです。世間を騒がせて注目されることで、満足を感じる人間でした。だから交換殺人をしているかのような怪しい動きをわざと残します。警察だけではなく、ワイドショーを見ている一般の人たちも二人が犯人だと信じることになります。

 

ところが状況証拠ばかりで、犯行を確定する証拠が出ません。それどころかアリバイを証明するような証言が、次から次に出てきます。なぜなら、本当の実行犯は別人なので、二人は一切犯行に及んでいないからです。証拠が出てくるわけはありません。

 

実行犯はサイコパスの傾向がある人間で、この二人に操られていたという設定です。これはのちに書かれた名作である『模倣犯』につながる内容だと思います。動機を持つものと実行犯が別だというトリックを、財布が語ることによって明らかになっていく物語です。

 

シリアスな事件なのですが、擬人化された財布の言葉に惹きつけられます。それぞれの財布の個性の強さに笑ってしまいます。もし財布に意識があったら、こんなふうに自分を見ているのだろうな、とマジで思ってしまいました。

 

わたしの財布は、昨年に買い換えたばかりです。かなり大切にしていますが、もっと愛情をかけてあげようと思ってしまいました。ちょうど半年ほど過ぎたところですが、わたしの財布にこれまでの感想を訊いてみたくなりました。どう思ってるんやろう〜〜w

 

decoration/dcr_emoji_238.gif『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。

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高羽そら|たかはそら(作家、小説家)プロフィール

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高羽そら(たかはそら)
今後の目標:毎年1つの物語を完成させたいと思います。
生年月日:昭和37年5月10日
血液型:A型
出身地:京都市

【経歴】
1962年京都市生まれ。数年前に生活の拠点を神戸に移してから、体外離脱を経験するようになる。『夢で会える 体外離脱入門』(ハート出版)を2012年1月に出版。『ゼロの物語Ⅰ〜出会い〜』、『ゼロの物語Ⅱ〜7本の剣の守り手〜』、『ゼロの物語Ⅲ〜次元上昇〜』の3部作を、2013年7月〜12月にかけて、オフィスニグンニイバよりAmazonのKindleにて出版。現在も新たな物語を執筆中。

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