幽霊より人間のほうが怖い
寒さのピークが過ぎたようで、今日はかなり暖かくなった。春分の日の連休あたりには、春らしい気温になるらしい。
昨日の散歩中に見つけた早咲きの桜は、すでに満開だった。春だねぇ。我が家のミューナも、今はコタツを出てうろうろしている。
かなり根を詰めて仕事をしているけれど、気分転換も必要。ところが気分転換どころか、背筋が寒くなってゾクゾクした映画を観た。
『告白』という2010年の日本映画。湊かなえさんの小説が原作で、ベストセラーになっている物語。
湊かなえさんという作家が大好きで、できる限り作品を読むようにしている。でも今のところ、この『告白』を超える作品はない。それほど凄まじいパワーを持つ小説で、関連する出来事をニュースで見るとすぐに思い出してしまう。
これがどのように映画化されるか興味津々だったけれど、脱帽の一言しか出てこなかった。よくこれだけの映画に仕上げたなぁと、心から感動してしまった。
監督の中島哲也さんが原作の脚色もされているので、物語の解釈に対する方向性がブレなかったのかもしれないね。この映画で伝えたい想いが、ストレートに伝わってきた。
この映画で取り上げられている社会問題は根が深いものばかり。少年犯罪、家庭内暴力、いじめ。そして少年Aを犯行に走らせた、母親の愛の欠乏。出演しているキャストが15歳未満なのに、R15指定になって出演者が映画を観られないというねじれが生まれている。
もう過去の映画だからネタバレしてもいいのだろうけれど、あえてやめておく。この映画のラストは絶対知らないで観るほうがいい。幼い娘を少年Aと少年Bに殺された女性教師の復讐が、完璧に実を結ぶ瞬間だから。
不謹慎かもしれないけれど、この小説を読む人や映画を観る人は、女性教師の森口悠子に感情移入すると思う。彼女を応援したくなる。ボクは小説も映画もそうだった。自分のなかに存在する、抗いがたいものに対する抑圧を解放してくれるからなのかもしれない。
その森口を演じた松たか子さんは、小説で読んだイメージどおりだった。ただただ、見事な演技だったと思う。歌手としても素敵だけれど、やっぱり女優さんとしても素晴らしいと思った。
その最高の演技に加えて、スローモーションを多用した演出が、彼女の心が抱える諦念による『静』と、怒りに駆られた復讐心による『動』を、より効果的にしている。
少年Bの母親を演じた木村佳乃さんもすごかった。とても難しい役だけれど、あの狂気へと至る演技には強烈な説得力があった。コミカルな役もできるだけに、女優としての懐の深さを感じさせてもらえた。
この物語に触れるといつも思う。幽霊なんかより、生きている人間のほうが絶対に怖い!
この映画はタイトルのとおり「告白」がメインになっている。関わる複数の人間の告白によって構成されている。最初に登場する森口が牛乳パックに対して語った告白は強烈だが、映画の進行にともなって出てくる別の人間の告白もかなり怖い。
少年Aは元々からサイコパス的な人間だけれど、ある意味少年Bの告白なんて最恐かもしれない。
だけどやっぱり背筋がぞくっとしながらも、「よしやった!」と思ってしまうのが、再び登場する森口という女性教師のラストでの告白。
この映画は、ボクにとって日本映画のなかで上位に入る作品になった。大げさではなく、日本映画史上に残る作品だと真面目に思う。
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。
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