誰がために鐘は鳴る
今日はとりあえず春かな。朝からかなり暖かいし、昼間も気温が上がっていると思う。桜の開花も、この暖かさで一気に進むかもしれない。
でも明日は雨で、気温が5度くらいは下がるとのこと。気温に身体を合わせていると大変だから、自分でうまく調節しなければ。
それでも厳しい寒さがおさまっただけに、仕事はやりやすい。今月もうひとつ計画していたことを今日終えたので、明日からは新しい小説に完全集中できる。
そして読むべき本と、観るべき映画やドラマがたまっているので、せっせと消化していこうと思っている。
昨晩、時間をかけて読んでいた小説をようやく読了した。文庫本の上下巻合わせて1000ページ近くある長編だったけれど、かなり夢中になって読んだ。
『誰がために鐘は鳴る』ヘミングウェイ著という本。
1936年から1939年にかけて行われた、スペインの内戦をテーマにした作品。ほとんど知らない戦争だったので、この小説をきっかけにして事実を調べることで、かなり世界史の勉強になった。
アメリカ人でありながら義勇兵として共和制軍に参加したロベルト。敵のファシスト軍の背後の山中にひそむゲリラ軍と協力することで、共和制側の一斉攻撃を成功させるため、ある橋を爆破するのが任務。
そのゲリラ軍のなかに、ファシスト兵に両親を殺害されたマリアという19歳の女性が保護されている。橋の爆破を3日後にひかえ、ゲリラの隠れ家で出会ったロベルトとマリアの恋、そして戦争によって引き裂かれる二人の運命を描いた作品。
この作品を少し急ぎ気味に読んでいたけれど、それには理由があった。実はこの作品の映画を録画してあって、原作を読んでから観ようと思っていた。そして今日の午後、ようやく映画を観た。
『誰が為に鐘は鳴る』(原題: For Whom the Bell Tolls)という1943年のアメリカ映画。ちなみに映画は『為に』と漢字表記になっている。
ロベルトにゲイリー・クーパー、そしてマリアにイングリッド・バーグマンが扮している。予備知識なしに映画を観始めたので、マリアが出てきたときにこんな綺麗な女優さんがいるのだと驚いた。髪を短く切っていたから、イングリッドだとすぐに気がつかなかった。そりゃ綺麗なはずやわ〜〜!
ボクが大好きな『カサブランカ』の翌年の映画だけれど、色気のある大人の女性を演じた『カサブランカ』とはまるで別人だった。さすがだよね。
ヘミングウェイの作品を最近は意識して読んでいる。恥ずかしながらまだこれで2作目だけれど、彼が『死』をいつも意識していることがわかる。
『武器よさらば』は第一次世界大戦をテーマにした物語で、主人公のヘンリーは恋人のキャサリンと戦地から必死で逃れる。ようやく中立国のスイスに逃れたのに、出産という予想外のできごとでキャサリンを亡くしてしまう。ちなみにこのヘンリーの役も、映画ではゲイリー・クーパーがやっているらしい。
『誰が為に鐘が鳴る』では、最後の死を迎えるのはロベルト。彼の死は、物語の冒頭でゲリラの首領の妻であるピラーが手相占いをすることで予告されている。だけど『武器よさらば』とはちがって、ロベルトの『死』に対する考え方に悲壮感はない。いやロベルトだけでなく、この物語の登場人物がすべて独特の死生観を持っている。
昨日まで隣近所として普通に交際していた人間と殺し合うのが内戦。この作品では、そのあまりにも非日常的な恐怖と、暴徒化した人間が有する狂気が見事に描かれている。
だからこそ、内戦を戦うゲリラ兵たちは常に死と向き合っている。その死生観はそれぞれちがうけれど、決してネガティブなものではない。ロベルトも最後に、マリアたちを助けるために自分の命を使うことを決意する。
この物語で最高に素晴らしいキャラは、ゲリラの首領であるパブロとその妻のピラー。この二人の異常とも言える人間性が、内戦の狂気を見事に象徴している。そしてこの二人によって、平和を希求する人間の叫び声が、小説の読者や映画を観ている人の心に強く響く。
最初はこの内戦の構図を理解するのが難しかった。スペインのファシスト側を支援しているのはイタリアやドイツ。ドイツはナチスが台頭しているころ。
反対に共和制を支えているのは当時のソ連やアメリカだったりする。資本主義VS共産主義というのは第二次世界大戦後の構図であって、この時代は民主主義VSファシズムという構図になっている。戦後世代のボクには、そのあたりの感覚をつかむまで少し時間がかかった。
小説も映画も、ともに素晴らしい作品だった。特に映画は、この物語の意図を汲んで素晴らしい作品に仕上げられていると思う。これは絶対に必要だと思うセリフが、映画の冒頭部分で強調されて使用されていた。
それにしてもイングリッド・バーグマンって、マジに綺麗だよね〜〜w
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。
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