流されて生きる怖さ
兵庫県は7月2日が知事選挙で、今日から実質的に選挙運動が始まった。候補者のポスターが貼り出され、歩いていると選挙カーの声が聴こえてくる。しばらくうるさい日々が続きそう。
だけど選挙というのはとても大切。自分の支持者が当選するとは限らないけれど、投票に行って意思表示をすることは必要。白紙投票でも立派な意思表示だと思う。いちばん怖いのは政治に無関心でいることだろう。
そんな政治の話題として、今日成立したテロ等準備罪、いわゆる共謀罪の法案に関して、ボクは違和感を拭えない。それは与党に対してでなく、違和感の対象は野党とマスコミ。与党を映画の悪役のように、強行採決という悪印象で塗りつけようとしているようにしか見えない。
だから自分の頭で考えていない人は、その印象操作に流されてしまう。なんだかとんでもない法律ができて、自分たちが監視されるような気分になってしまう。でもボクなりに勉強したけれど、そこまで恐ろしい法律じゃないと思う。もちろん適用に慎重さが要求されるのは、どの法律だって同じ。
そもそも戦前の治安維持法と紐づけている野党の主張に、違和感を覚えている。治安維持法は共産主義対策がきっかけで作られて法律で、国体に反する思想等を摘発した。だから合法的な集まりであっても、処罰の対象になっている。それがさらに拡大解釈されて、戦時中にいわゆる『密告』という、令状なしで逮捕する闇を生み出していた。
でも今回のテロ等準備罪は、あくまでもテロ行為に関わる共謀についての法律で、合法的な集会に対して適用されるものじゃない。昨今の世界のテロの現状を見ていると、東京オリンピックを控えた日本にとって必要な法律だと感じる。決して治安維持法と同等に論議するものじゃない。
とにかくボクが言いたいことは、大声で叫ぶ野党やマスコミの報道だけで判断するのじゃなく、賛成意見も含めて自分の頭で考えるべきだということ。そのうえで賛成や反対の意見を持てばいい。それはそれぞれだから、どちらの意見も大切だろう。反対する人を揶揄するつもりはない。最悪なのは、何も考えずに流されて生きること。
そんな生き方の怖さを思い知らされた映画を観た。
『続・激突!/カージャック』(原題:The Sugarland Express)という1974年のアメリカ映画。
この映画の主人公は、刑務所を脱走したクロヴィスとその妻のルー・ジーン。窃盗の罪で刑務所から出所したルー・ジーンは、ひとり息子が里親に出されていることを知る。そこで服役中の夫を脱走させ、里親から子供を取り返そうとする映画。
最初は老夫婦の車に便乗するが、成り行きで警官を人質にしてパトカーで逃走することになる。結論から言えば、クロヴィスは射殺されるが、妻は逮捕後に出所して子供をとり戻している。1969年に起きた実話の事件を元にして、映画化された作品。
この夫婦が本当にバカ。目先のことしか考えていない。子供を愛しているのは理解できても、そのための行動がめちゃくちゃ。どう考えても成功する見込みがないのに、親子3人で平和に暮らす夢ばかりを追いかけている。子供のころから植え付けられた『幸福』のイメージを、ただ追い続けているだけ。
冷静に自分の頭を使えば、カージャックに未来がないことはわかるはず。けれどもこのふたりは、そんな人生を送ってこなかった。現実の課題から目を背け、何も考えず行き当たりばったりの人生を過ごしてきた。その結果がこの逃亡劇ということ。
シンプルだけれど、この時代としてはよくできた映画だと思う。さすがスピルバーグ監督。ただこの邦題はかなりマズい。『激突』というスピルバーグの有名な映画に便乗して、カーチェイスがあるだけで『続・激突』というタイトルをつけている。
まったく関連性のない映画だし、テーマもちがう。『激突』のように人間が抱える根源的な恐怖を描いた作品じゃない。このタイトルをつけた日本の配給会社は、やっぱり目先のことしか考えていなかったということだろう。もっと自分の頭で考えようねw
でもルー・ジーンを演じたゴールディ・ホーンはいい演技だった。逃走中なのにスーパーのサービス券をあさるシーンでは、主人公の浅はかさが見事に出ていた。そして気弱な夫のクロヴィスを演じたウィリアム・アザートンもいい雰囲気。『ダイハード』のテレビ記者役だと気づくのに、かなり時間がかかったくらいの名演技だった。なかなかの映画だと思う。
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