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高羽そらさんインタビュー

ピュアな心は、善も悪も写す鏡になる

雲が多くて湿度の高い1日だったけれど、雨が降る気配はまったくない。夜になると降るのかな?

 

とにかく傘なしで外出できたので、今月のミッションを無事に終えた。何かといえば、昨日のブログで書いた散髪。ミッションなんて大げさだと思うだろうけど、それほど他人に頭を触られるのが苦手なんだよねぇw

 

まぁ、それでもスッキリしたのはたしか。次は8月かな。毎月行かなければならないとしたら、きっと胃潰瘍になるだろう。奇数月はホッとして過ごせる。

 

さて、昨日はある本を読了した。ここ数年ではもっとも感動して、心に残った小説かもしれない。

 

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『白痴』ドストエフスキー著という本。

 

この写真は文庫の上下巻。それぞれ700ページほどあるという、とんでもない大長編。かなり本を読むのが早いボクでも、8日間もかかってしまった。毎晩2〜3時間近く読んだけれど、1冊を読むのにどうしても4日かかる。

 

ただ長いだけでなく、文字数がハンパない。

 

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こんな感じで改行のないビッチリと詰まった文章が、延々と続く。たまに会話の主が変わって改行されていると、ほっとするような始末。

 

おまけに語り手の視点がコロコロ変わるので、今は誰の視点で物語が進行しているかを常に把握しなければいけない。もしこのままの状態で、現代の日本の出版社の新人賞に応募したら、予備選考で落とされるのは確実な書き方だよね〜w

 

ところがその内容は実に素晴らしい。ドストエフスキーを読むのはこれで3作品目になるが、『罪と罰』よりも圧倒的にこちらを支持する。ボクにとって生涯忘れることのない作品になるだろう。

 

上巻の3分の1を読んだところで、号泣してしまった。話の筋にあまり関係ない主人公の回想なんだけれど、泣けてきて、泣けてきて。この本に出会えるまで、ボクは半世紀もかかってしまったんだね。でも死ぬまでに読めてよかった。マジでそう思う作品。

 

下巻の巻末の解説で、ドストエフスキーの本人の言葉が掲載されている。彼がこの作品でやりたかったことは『完全な美しい人間』あるいは『無条件に美しい人間』を描くこと。彼の頭には、イエス・キリストがイメージされていたらしい。

 

物語の主人公はムイシュキン公爵という27歳の男性。子供のころから癲癇の持病があり、青年になるまでかなり重症だった。両親が死んだ彼は、スイスの療養所で治療を受けた。ようやく普通の暮らしができるようになった公爵は、生まれ故郷のロシアに戻ってくる。

 

とりあえず遺産を持っている公爵は、ペテルブルグで知人を得ようとする。親戚にあたる将軍家を訪ねることで、様々な人と出会う。いわゆる白痴、つまりバカだということで、最初は誰もが彼をまともに取り扱わない。変人と決めつけて、懇意になろうとしない。

 

ところがこの公爵ほど、ピュアな魂の人間はいない。どれほどひどい目に遭わされてもその人物を許し、相手の幸せを願う。常に相手の立場に立って物事を考え、真剣に話を聞く。そんな公爵の人柄に直接触れると、誰もが彼のことを好きにならざるをえない。

 

ところがピュアな魂というものは、接する人間にとって鏡のような効果を持っているらしい。怒り、妬み、絶望等を抱えている人間が彼の前に立つと、ありのままの姿があぶり出されることになる。それゆえ公爵は、常にトラブルに巻き込まれてしまう。

 

なかでもナスターシャという女性は、最初にムイシュキン公爵の純粋な魂を見抜いた人物だった。孤児だったけれど、素晴らしい美貌で金持ちの保護を受け、大勢の貴族の愛人として生きていきた女性だった。だけど彼女をひとりの人間として扱ってくれたのは、ムイシュキン公爵が初めてだった。

 

ムイシュキン公爵はナスターシャに惹かれ、彼女もそんな彼を愛するが、自分の汚れた立場では彼と結婚するなんて許されないと感じる。それゆえ彼女が本来持っている威圧的で自虐的な人間性が暴れ出すことで、とんでもない奇行をくり返すようになる。

 

そしてそれが最終的に、ふたりを取り巻く悲劇を演出することになる。

 

結論から言えば、ナスターシャは嫉妬を抱えたある男に殺される。そのことがきっかけでムイシュキン公爵は再び精神を病み、友人たちの顔も認識できない状態になって再びスイスの病院に収容され、物語が終わる。

 

この結末は、ドストエフスキーによる強烈な皮肉となっている。つまりこの時代のロシアにおいて、ムイシュキン公爵のような『完全な美しい人間』が生きる場所はないということ。まともな人間は発狂するしかない社会だと、著者は暗に訴えている。ボクは強烈にそう感じた。

 

そんなピュアな彼を、誰もが「白痴』だと言ってバカにする。なんという皮肉だろう! 誰もが本当は公爵を好きでたまらないのに、狂人として扱い、社会から抹殺してしまう。

 

これは決して19世紀のロシアに限ったことじゃないだろう。現代でも言えることだと思う。う〜ん、なんというすごい作家だろう。とにかく時間を作って、できる限りドストエフスキーの作品を読んでみようと思っている。

 

decoration/dcr_emoji_238.gif『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。

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高羽そら|たかはそら(作家、小説家)プロフィール

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高羽そら(たかはそら)
今後の目標:毎年1つの物語を完成させたいと思います。
生年月日:昭和37年5月10日
血液型:A型
出身地:京都市

【経歴】
1962年京都市生まれ。数年前に生活の拠点を神戸に移してから、体外離脱を経験するようになる。『夢で会える 体外離脱入門』(ハート出版)を2012年1月に出版。『ゼロの物語Ⅰ〜出会い〜』、『ゼロの物語Ⅱ〜7本の剣の守り手〜』、『ゼロの物語Ⅲ〜次元上昇〜』の3部作を、2013年7月〜12月にかけて、オフィスニグンニイバよりAmazonのKindleにて出版。現在も新たな物語を執筆中。

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