虚構が人類を進化させた
今日の神戸は、雲ひとつない見事な秋晴れ。立冬を過ぎたから暦は冬だけれども、本格的な秋はまだまだこれから。
我が家の近所にある木は、すっかり秋色。まるで金箔で細工された木のように見える。今月の末には関西の紅葉は見ごろになるだろうから、できればどこかに行きたいと思っている。今年の紅葉は、今年しか見られないからね。
さて秋といえば、「読書の秋」でもある。もちろん「食欲の秋」も忘れていないけれどねw
ボクは小説だけでなく、ジャンルを広げて読書することを意識している。最近は2日に1冊のペースに落ちてしまったけれど、基本的にそれは続けていくつもり。そしてさらに意識しているのが、読解力を高めること。言いかえれば集中力を高めることでもある。
本を読んでいて視覚がとらえた単語から、勝手に連想ゲームが始まることがある。本文の内容にまったく関係ないことを、たった一つの単語のせいでつらつらと考えてしまう。それでは毎晩2時間読書をしていても無駄が多い。
つまり読解力を高めるには、意識が連想ゲームに走らないようにする必要がある。それは集中力しかない。今自分は何を考えるべきなのか、ということを強く想い続けることで、文面の内容から意識がそれることがなくなる。
簡単にいうけれど、これは意外に難しい。特に疲れていたり寝不足のときは、すぐに妄想の世界に入ってしまう。それではただページを繰っているだけで、読書しているとはいえない。ボクの課題は、今よりさらにその集中力を高めること。
読書の集中力を高めるために、秋の夜長に読むべき最適の本がある。
『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福』上巻 ユヴァル・ノア・ハラリ著という本。
著者はイスラエルの歴史学者で、この本はかなり話題になったので知っている人も多いはず。ようやく読むことができた。
人類という種が地球の歴史に存在するところから現代まで、そして未来の人類に対しても言及されている。まさにサピエンス全史、と言っていい深い内容。とにかく網羅されている範囲が半端なく広いので、普段から読書慣れしていない人には読むのに時間がかかるかもしれない。
そういう意味では、読書に関する集中力を育てるのに最適な本だと思う。少し難しいけれど、とにかくめちゃめちゃ面白い。ボクは第1章を読んだ段階で、この本を買って手元に置いておこうかと真剣に考えたほど。
人類はホモ・サピエンスという学名になる。だけど人類はただ一つの種ではなかった。他にもホモ・○○○という種がいくつもあった。さらにホモ・サピエンスが東アフリカで勢力を伸ばしつつあったころ、ヨーロッパを席巻していたのはネアンデルタール人だった。
20万年前からこんな状態が続いていたけれど、今から7万年ほど前にホモ・サピエンスがヨーロッパへ進出する。当時はどの種も狩猟採取民であり、生活の方法は大して変わらない。獲物を狩ったり、木の実を拾ったりしている。定住地を持たず、食料を求めて一定の単位で放浪する。
ところがホモ・サピエンスは他の種を追いやっていく。ネアンデルタール人を絶滅させ、15000年前にはアジアから中国、そしてオーストラリア大陸まで進出している。最終的には人類として残ったのは、ホモ・サピエンスだけになってしまった。
なぜそんなことが起きたのか?
それは『認知革命』というものが起きたから。簡単にいえば『虚構を信じる能力』のこと。
狩猟採取民は、実際に見えたり触れたりするものしか認知しない。ところがホモ・サピエンスは虚構を信じることができるようになった。実際に存在しない概念を、他人と共有できるという『認知革命』を起こす。
動物学的にいうと、動物も人類もせいぜい150という個体数が限界らしい。それを超えると、群れとしてまとまりを持てなくなる。ところが虚構を信じることができると、それを何百、何千という集団にまとめることができる。
ホモ・サピエンスは『神』という虚構を創造することで、家族の枠を超えた集団をまとめることができたということ。同じイデオロギーやスローガンを共有することで、他の種に大して数に勝る攻撃を行うことができる。『認知革命』を持たない種は、当然ながら絶滅するしかない。
とまぁ、第1章だけでこんなことが書かれている。『認知革命』に続き、『農業革命』と人類の統一、そして下巻では『科学革命』という流れになる。そしてラストでは『超・ホモ・サピエンス』という内容に至る。
ということで今日から下巻を読む。最終的な感想はそのときに置くとして、とにかく人類を人類たらしめているいのが、『虚構』だということに感動するとともに、強烈に納得している。
現代における『虚構』の最たるものが、小説や映画という物語だからね。やっぱり人類に『虚構』は欠かせないということだろう。
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