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高羽そらさんインタビュー

奇跡を呼んだ無償の愛

Facebookの機能に、過去における同日の記事を教えてくれるものがある。去年や2年前の今日に何をして、どんなことを考えていたかが、その記事とリンクしているブログを読むとわかる。

 

先週のことでも忘れてしまうボクだから、1年前のことなんてたいして覚えていない。だから読み直すことで、記憶の補填ができている。

 

ただ基本的に過去の文章を読むのは苦手。特に今年になってブログの文体を意図的に変えたので、昨年の記事はかなり小っ恥ずかしい。えらそうなことを書いていたら、恥ずかしくて隠れたくなる。

 

これとよく似た感覚が、録音された自分の声を聴いているときだよね。昨年FMラジオに出演したときの録音を番組の方から送っていただいて聴いたとき、自分の声を聴くだけで赤面した。他人はこの声を聴いているんだけれど、ボクの耳には内耳から伝わる音も含まれるので同じじゃない。自分のはずなのに自分でない感覚が、なんとも言えず恥ずかしいんだよね。

 

昨日から過去に書いた小説のリライトをしているけれど、これまた同じ感覚を味わっている。今の自分が見ると、どことなく自分が書いたものとちがうような気がする。その微妙な恥ずかしさを感じつつ、当分のあいだは今の自分の作品に変えていくしかないなぁ。

 

さて、とても素敵な映画を観た。

 

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『ル・アーブルの靴みがき』という2011年の、フィンランド、フランス、ドイツの合作映画。

 

地味な雰囲気だけれど、実に素晴らしい作品だった。主人公はル・アーブルというフランスの港町に暮らすマルセルという名の老人。靴みがきの仕事で細々と稼ぎながら、貧しいながらも妻と二人で幸せに暮らしている。

 

ある日この街で密航者が見つかる。アフリカからの難民で、貨物コンテナのなかに潜んでいるのが発見される。最近のヨーロッパは難民の受け入れで議論が白熱しているが、まさにそんな世相を反映した映画。

 

フランス政府としてはこうした違法な難民は国外退去にしている。ところが少年が一人脱走する。そしてマルセルと偶然に出会う。マルセルは心優しい人間で、ベトナミ移民の靴みがき仲間と一緒に仕事をしているような男。妻も移民だったという前提になっている。

 

それでその子を保護する。ところがその直前に妻が体調を崩して入院する。医師の診断によると、余命いくばくもない状態だった。妻はその事実をマルセルに伏せたうえ、痩せていく自分を見せるのが嫌で2週間は見舞いに来ないように言う。

 

マルセルも難民の子供のことで手一杯。調査してみると、子供の母親がロンドンにいることがわかった。どうにかしてドーバー海峡を越えてこの子を母親の元に送り届けてやりたい。そこでマルセルは懸命になって、警察の目をかいくぐってロンドンへの密航を模索する。

 

この映画が素敵なのは、そんなマルセルを支える近所の人たち。誰もが貧しい暮らしに耐えて生きているからこそ、難民の人たちの苦労を知っている。だから見返りを求めることなくマルセルに手を貸す。まさに無償の愛。

 

結論から言うと、敵だと思っていた刑事の協力によって難民の子供は無事にロンドンへ旅立つ。ところがマルセルが病院に行くと、妻のベッドが片付けられている。この映画の観客は、あぁ、マルセルは妻の死に目に会えなかったと思うだろう。ボクもそう思った。

 

ところが奇跡が起きていた。妻の病気は完全に消えて、すでに退院の準備をしていた。医者は奇跡としか言えない、と呆然としている。マルセルたちの無償の愛が、奇跡を呼んだという物語だった。

 

ある意味ベタなんだけれど、難民問題というリアリティの高いテーマを扱うことによって、現実味を帯びた作品になっている。観終わって心がポカポカに温かくなる、とても素晴らしい映画だった。

 

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高羽そら|たかはそら(作家、小説家)プロフィール

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高羽そら(たかはそら)
今後の目標:毎年1つの物語を完成させたいと思います。
生年月日:昭和37年5月10日
血液型:A型
出身地:京都市

【経歴】
1962年京都市生まれ。数年前に生活の拠点を神戸に移してから、体外離脱を経験するようになる。『夢で会える 体外離脱入門』(ハート出版)を2012年1月に出版。『ゼロの物語Ⅰ〜出会い〜』、『ゼロの物語Ⅱ〜7本の剣の守り手〜』、『ゼロの物語Ⅲ〜次元上昇〜』の3部作を、2013年7月〜12月にかけて、オフィスニグンニイバよりAmazonのKindleにて出版。現在も新たな物語を執筆中。

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