怨念を忘れちゃいけない
今日は朝から5月らしい、とても過ごしやすい天気。自画自賛ながら、気持ちのいい季節に生まれたと思う。風がさわやかで、気温もちょうどいい。
来週にはまた夏のような気温になるそうだから、今日の気候をしっかりと満喫しておこうと思う。
さて、ようやくオカルト小説の下巻を読み終えた。
『クリスティーン』下巻 スティーブン・キング著という小説。
上巻を紹介した『これ、めちゃオカルトやんんか!』というブログにも書いたけれど、きっかけは映画を観たこと。そこそこ面白い作品だったけれど、原作を読んで、映画のほうは大失敗だと理解できた。この物語のもっとも大切な部分を、映画では省略してしまっている。
それは、『怨念』というもの。
この物語全体を貫いているのは、ルベイという老人の怨念。そしてその後継者となったアーニーという高校生の怨念。社会にうまく適応できず、はみ出し者として扱われている。彼らの社会に対する怨念が、この物語を動かす原動力になっている。それなのに、映画ではそれを無視している。成功するわけがない。
クリスティーンという車の秘密が、下巻で明かされる。アーニーに車を売ったルベイという老人は、生きながらの『魔物』だと言っていい。10代のころから、自分をバカにする人間を密かに殺してきた。その原動力は先ほども書いた『怨念』だった。
その怨念の完成形として、クリスティーンと名付けた車を選んだ。事故や自殺に見せかけて、幼い娘と妻を車のなかで殺している。それは『魔物』に対する生け贄だった。そうすることで、クリスティーンは魔力を持つ。
だけどルベイも肉体の老化には勝てない。そこで選んだのがアーニーという高校生。自分と同じ怨念を心の奥に抱えていることを見抜き、彼にクリスティーンを売ることで、アーニーに憑依することを決意していた。
だから車を買ってからのアーニーは、少しずつルベイに乗っ取られて行く。その過程が怖いけれど、めちゃめちゃ面白い。筆跡まで変わるからね。アーニーの親友であるデニスは、どうにかしてアーニーを取り戻そうとする。その熾烈な戦いが、下巻の中心となっている。
エンディングも当然ながら映画と原作ではちがう。映画ではデニスと、リーというアーニーの恋人が活躍することで、クリスティーンをスクラップにする。リーが殺されそうになる直前に、アーニーが現れて彼女を助けようとして死んでしまうというラスト。
そして最後に、スクラップになったクリスティーンが、再び目覚めるシーンで終わる。『キャリー』と同じパターンだよね。原作者は同じだからかな。
ところが小説はちがう。怨霊化したルベイがデニスとリーを襲う。殺人のアリバイを作っておかないと、肉体を借りているアーニーが逮捕されてしまう。だからルベイがクリスティーンを運転して殺人を犯すときは、必ずアーニーを遠方に移動させていた。
最終的にデニスがクリスティーンを破壊する。怨霊となったルベイは、あわてて遠方にいるアーニーの肉体に戻ろうとする。ところが一時的に正気を戻していたアーニーは、必死でルベイと闘う。憑依されないよう抵抗した結果、相討ちとなって交通事故でアーニーは死んでしまう。
クリスティーンは警察に確保され、完全に破壊される。でもそれで終わらない。クリスティーンを破壊したことがある不良少年の一人が危険を察知して、まったくちがう州に逃亡していた。
事件が解決してから4年後のデニスに、恐ろしい知らせが入る。逃亡していた不良少年が、ズタズタに轢き殺されて見つかっている。ルベイ、そしてクリスティーンは生きているということ。次は自分の番だ。デニスが恐怖に怯えるところで、物語が終わる。
原作では、最後の最後まで『怨念』が描かれている。だからこそ面白い。スティーブン・キングの作品はいくつも映画化されているけれど、ボクは今まで原作を読んだことがなかった。
もしかすると、この作品のように原作はもっと素晴らしいかも。こうなれば、彼の作品を読まなくては。とりあえず映画化作品等を気にせず、手当り次第に読んでいこうと思っている。今日も図書館で、いくつか借りてきた。今年の後半はホラー小説を書くつもりなので、きっといい勉強になると思う。
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。
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