才能は狂気を超越する
帰省するみなさん、お疲れ様です。今日はお盆の帰省ラッシュがピークらしい。新幹線や高速道路は、さぞ混雑していることだろう。
神戸六甲の街も、どことなく人が少ない。学生の街なので、神戸を離れる人が多いからだろう。スーパーも、いつもと人の流れがちがう印象だった。
ボクも妻も、帰省する実家も会いに行く親もいない。もし会うなら、あの世に行くしかない。あっ、お盆だからこっちへ来てるのか。
しかし死んだ人間がお盆に戻るって、その人たちは成仏していないということ? それともその時期だけ、あの世のポータルが開くとか? 仏教は生まれ変わりを認めているから、お盆に戻ってくる霊は待機中ということ? とにかく疑問が尽きない。
だったらなぜ墓参りに行くんだろう。京都五山の送り火までは先祖の霊が自宅にいるのなら、お墓参りに行っても留守やと思うんだけどな。この時期になると、いつも僧侶の人にそのあたりを訊いてみたくなる。まぁ、適当な答えしか返ってきそうにないけれど。
子供のころは、お盆が本当に怖かった。まだ祖父母なら顔見知り。だけど数代前の先祖なんか、はっきり言って他人でしかない。そんな連中が何世代分いるのか知らないけれど、家でウロウロしていると思うだけでパニックになった。
そんなお盆のことを考えながらも、ボクはいつもと同じ生活。とにかく必死で新作小説を書いている。そして大切なインプットも忘れていない。
以前から知っていたけれど、初めて観た作品がある。最近もろくなっている涙腺が、めちゃ崩壊してしまった。
『シャイン』という1996年のオーストラリア映画。デイヴィッド・ヘルフゴットという実在のピアニストの半生を描いた作品。このデイヴィットを演じたジェフリー・ラッシュは、この作品でアカデミー主演男優賞を受賞している。その評価が文句なしだと断言できる素晴らしい演技だった。
ジェフリー・ラッシュといえば、ボクのなかで最も印象に残っているのは『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズのレギュラーとして有名なバルボッサ船長。それから『英国王のスピーチ』の言語療法士役だった。どの役もよかったけれど、ボクはこの映画のジェフリーが最高だと思う。
デイヴィッドは神童と呼ばれたピアノの天才だった。厳しい父のレッスンを受けて、数々の賞を受賞する。だが父は息子が自分の元から去ることを恐れ、アメリカの音楽学校の招待を拒絶する。自分勝手な父親に振り回されるデイヴィッドは、失望しながらも父の言葉にしたがう。
だけど彼の才能は隠すことができない。また大きなコンテストで優勝したことで、イギリスの王立音楽学校から奨学生として誘いを受ける。同じく父は勘当すると息子を脅すが、今度は父の反対を押し切ってイギリスに出る。
ところがそのころから、彼には病気の兆候があった。遺伝的に精神を病みやすく、常にトップでいなければいけないというプレッシャーで、精神に異常をきたしてしまう。あるコンテストで最高の結果を出したのち、病院に収容されてしまう。
その後は廃人のような生活を送る。病気が悪化するので、絶対にピアノに触れてはいけないと医師からきつく言われている。だけど道に迷ったある日、偶然に行きあったバーで我慢できずにピアノを弾く。
居合わせた客たちはその演奏に驚き、賞賛の嵐となる。ピアノゆえに狂気に落ちた男が、今度はピアノによって救われる。そしてそのバーで、生涯の伴りょとなる妻とも出会う。
才能が狂気を超越する瞬間を、この映画で観たような気がする。こういう人を本当の天才というんだろうね。
この映画でラフマニノフの難しい曲を演奏するシーンがある。まだ学生のデイヴィッドが弾くシーンなんだけれど、手だけが映ったときは、本物のデイヴィッドが演奏していたそう。だから本物の天才の指さばきを見るだけでも価値のある映画だと思う。
1947年生まれのデイヴィッドは、今もご存命で夫婦ともお元気らしい。
ちなみにこの映画が公開されとき、デイヴィッドの姉妹が抗議した。映画では厳格で息子の夢を奪った父として描かれているけれど、実際はそんなことなかったらしい。アメリカ行きに反対したのも、デイヴィッドの病気の兆候を感じていた可能性があるとのこと。
だからフィクションとして観るべき作品だけれど、感動することに変わりない。またまたボロ泣きしてしまった。
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。
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