そこにあるのは常に『今』
12月4日だというのに、神戸の気温は23度近くまで上昇している。部屋の中にいるより、バルコニーに出たほうが暖かいという異常な状況になっている。
全国的にそんな傾向らしく、大分では27度まで上がったそう。ホンマ、どないなってんねん。
それでもまもなく寒冷前線が通過するらしく、ようやく冬らしい気候になりそう。夏日のような気温だけれど、週末にはダウンジャケットが必要になるかもね。
さて12月といえば、NHKの大河ドラマもエンディングを迎える。『西郷どん』も次回にはいよいよ西南戦争へ突入する。なかなかいいドラマだったので、1年を通じて楽しく見ることができた。
こういう時代劇は、時代考証にこだわる人が多い。たしかに大切なことだと思う。でも時代劇には、時代考証よりも大切なことがあると思う。
それは時代劇を通じて『今』を描くこと。
歴史の勉強じゃなくてドラマなんだから、放映されている時代の人の心に響く必要がある。過去を描きながらも、今の時代を描くのが時代劇だと思う。150年前に起きた事実は理解できても、当時の人々の本当の心のうちはわからない。それは時代がちがうから当然のこと。
だから時代劇は、過去の出来事を利用しながら『今』の人が抱えている普遍的なことを、ドラマのモチーフにするべきだと考えている。極論すれば、時代劇であろうと現代劇であろうと、そして未来を描いたものでも同じ。
物語にあるのは、常に『今』だと思う。
そんなことを改めて感じさせてもらえる映画を観た。
『東京家族』という2013年の映画。久しぶりに見直したけれど、本当にいい作品だよね。またまた感動で号泣してしまった。
これは大勢の人が知っていると思うけれど、小津安二郎監督の代表作である『東京物語』に対して、山田洋次監督がオマージュとして撮影した作品。『東京物語』は1953年に公開されて、当時の世相を反映していた。
この映画はその時代考証を現代に翻訳して、新しい作品として公開されている。じっくり見直してみて感じたけれど、小津作品と伝えていることはまったく同じ。時代設定による舞台のちがいは大きいけれど、二つの映画のテーマは完璧にリンクしている。
本当に素晴らしい作品というのは、人間の心に存在する普遍的なテーマを扱っていると思う。だから『東京物語』を観ても、この『東京家族』を観ても、同じことを感じる。だからこれらの映画を、50年後の人が観ても同じことを感じるはず。
小説でも映画でも、読んだり観たりする人が存在している『今』に響くものであるべき。時代考証なんて、二の次でいいと思う。本当に大切なのは、いつの時代の『今』であっても、物語のなかに響くものが存在することだと思う。
物語を創作する人間は、このことを忘れていはいけない。この映画を久しぶりに観て、そう自分に強く言い聞かせた。
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