『知らぬが仏』という武器
『知らぬが仏』という言葉を、ボクは身をもって体験したことがある。かなり以前のブログで書いたことがある事件。
京都にいるとき、ギックリ腰をやって温泉めぐりをしていたことがある。滋賀県に町営のいい温泉があるという情報を見て、ボクと妻は車で向かった。シャンプー・リンスが常備されている天然温泉なのに、町営なので銭湯と同じくらいの料金だった。
気持ちよく入浴して、妻とロビーで待ち合わせしたとき、「髪の毛を洗えないと気持ち悪いね」と妻が言った。何を言っているのかさっぱりわからない。
ボクは気持ちよくシャンプーもリンスもした。それも誰も使っていない新品の容器だった。ボクがその話をすると、妻が唖然とした顔をしている。そしてようやく事情を知った。
どうやらシャンプー・リンスの常備が中止になっていたらしい。でもボクはメガネを外すと注意書きが読めない。だから浴室に置いてあるものは、自由に使っていいと思い込んでいた。それで他人の新品を使ったというのが真相だった。まさに『知らぬが仏』という状態で、いまでも我が家では笑い話になっている。
そんな『知らぬが仏』という人間心理を悪用して、強力な武器に変えたという映画を観た。
『テレフォン』という1978年のアメリカ映画。ボクの世代にはめちゃ懐かしいチャールズ・ブロンソンが主演している。
チャールズ・ブロンソンが演じているのは、ボルゾフ少佐というソ連のKGBに所属する人物。ある日、アメリカで不可解な事件が続発した。一般市民がアメリカの軍事施設を爆破するというもの。その背景にあるのは、KGBが仕組んだ過去の恐るべき作戦だった。
アメリカとソ連が核戦争を起こしたときにそなえて、KGBは50人以上の人間をアメリカ市民になりませて潜入させていた。ところがそれらの人物は自分がKGBのスパイだという自覚がない。『知らぬが仏』で、普通に暮らしている。
だけどそのスパイたちには、薬物を使った催眠術がかけられていて、ある詩の一節を耳にすると自宅近くにある軍事施設を爆破するという自爆工作員。アメリカとソ連の冷戦が緩和されていたので、利用することなく放置されているスパイたちだったというわけ。
ところがソ連において出世街道から外れたダルチムスキーという男が、その工作員の名簿を手に入れる。そしてアメリカで工作員に電話をかけて詩の一節を聞かせることで、ソ連とアメリカを戦争に巻き込もうとしていた。
ボルゾフはその陰謀を阻止するため、単身でアメリカに乗り込み、現地の連絡係の助けを得て事件を解決するという物語。二重スパイがからんでいたりして、主人公は窮地におちいるけれど、ラストは気持ちのいいハッピーエンドで終わる作品になっている。古いけれど、なかなか面白い映画だった。
普通スパイというのは、自分が工作員であることを自覚している。だけどこの映画のスパイは、顕在意識ではまったく自覚がない。それだけに誰にもバレないから、最強の武器になる。現実的ではないけれど、フィクションならではの設定なので楽しく観ることができた。
やっぱ、『知らぬが仏』は最強だよねwww
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