『正しいこと』をやる勇気
人間には『良心』があるかどうか?
答えるのが難しい問いだと思う。もちろん「ある」と答えたいし、「ある」と信じたい。だけどそうじゃない例を、ボクたちは多く見すぎている。
先日、自転車の男性が年配の女性をひき逃げした映像が報道されていた。真正面からぶつかっているので、その女性は歩道上ではね飛ばされている。
もしその人に『良心』があるとしたら、出会い頭とはいえ謝罪して助けようとするだろう。だけどその男性は逃げ去った。自動車の運転でも多いのが、ひき逃げや当て逃げという犯罪。事故を起こしたことが怖くなった、あるいは酒を飲んでいた等、信じられない理由で被害者を置き去りにしている。
こういうことは、いつ誰に起きるかわからない。普段から人格者だと言われているような人でも、突発的な窮地に追い込まれたときにどうなるかわからない。
そんなパニックになったときに『良心』が働いて、人間は『正しいこと』をできるだろうか?
ここで問題になるのは『正しいこと』の定義だよね。自分の立場を守るという観点においては、ひき逃げが利己的であると非難されても、その瞬間のその人にとって「正しいこと』だったのかもしれない。ただこの『正しさ』は、『良心』という言葉からはかけ離れているように感じる。
自分にとって、そして同時に他人にとっても『正しいこと』行える勇気。それを『良心』と呼ぶのかもしれない。そんなことを感じさえてもらえる映画を観た。
『トラッシュ! -この街が輝く日まで-』という2014年のイギリスとブラジルの合作映画。『正しいこと』を行なった3人の少年の冒険物語。よくできた作品で、大勢の人に観て欲しいと感じる素晴らしい映画だった。
舞台はブラジルのリオデジャネイロ。郊外のスラム街で暮らすラファエル、ガルド、ラットの3人は、ゴミ拾いをして暮らしていた。教会の神父やボランティアの女性に助けられているので、おそらく孤児たちだと思われる。
ある日、ゴミの山から少年達は財布を見つける。もちろんお金はきっちりいただいた。ただ、なかには不思議な写真や数字が書かれたものが見つかった。コインロッカーの鍵もある。そして突然警察がやってきて、その財布を見つけたものに賞金を出すという。
最初は賞金が目当てなので、値上がりするのを待っていた。そのために財布の秘密を調べようとして、様々なことが明らかになってくる。財布に残されていたのは、莫大な汚職を行なっている市長候補の悪行を暴露するための暗号だった。
やがてこの3人が財布を隠し持っていることを警察は気づく。警察もグルなので3人は命を狙われる。そこで暗号を解くための冒険が始まる。3人を助けたボランティアの女性が、なぜそこまでその財布の秘密にこだわるのか尋ねるシーンがある。
少年は『正しいことだから」と答える。そこには賞金を期待していた少年たちの姿はない。『良心』のかたまりだった。
もちろん映画はハッピーエンドを迎える。比較的新しい作品なので、ネタバレはここまで。暗号を解く過程なんて、なかなかよくできているよ。
神父役のマーティン・シーンと、アメリカ人の女性ボランティアを演じたルーニー・マーラーが最高だった。ルーニーはハリウッド版の『ドラゴンタトゥーの女』でリスベット・サランデルを演じた女優さん。リスペットとまったくちがうタイプの役だけれど、素晴らしい演技だった。
『正しいこと』をやる勇気に共感できる、素敵な冒険映画だったなぁ。
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