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高羽そらさんインタビュー

スッキリしない大国の威圧感

多様性の容認というのは、相手の立場を尊重することなしに成立しない。自分の考えを押し付けたり、相手の意向に反して変革を迫るのは暴力であり、国家間においては侵略に等しい。中国政府がチベット民族やウィグル人たちに行ったことは、典型的な侵略行為だろう。

 

だけど19世紀の終わりから20世紀初頭にかけては、この行為は大国が一般的に行ってきたことだった。アジアに触手を伸ばしたイギリス、フランス、アメリカ等の大国は、文化の発展や変革をチラつかせながらアジアの国家を植民地化しようと競っていた。

 

昨日観た映画がまさにそんな時代の物語。笑顔になれる素晴らしいミュージカル映画なのに、ボクは大国の威圧感にずっと違和感が拭えなかった。

 

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『王様と私』という1956年のアメリカ映画。有名な作品だけれど未見だった。ユル・ブリンナーという俳優さんは大好きで、『荒野の7人』なんか数えきれないほど観ている。だけど彼がアカデミー主演賞を受賞したこの作品を観るのは初めて。

 

映画としては素敵なミュージカルで、数々の賞を受賞したのが納得できる作品だった。シャム王国の王を演じたユリ・ブリンナーのオーバーアクションが、かえって効果的で強く印象に残っている。『十戒』に出演したのと同じ公開年なんだね。やっぱり若い!

 

そしてイギリス家庭教師のアンナを演じたデボラ・カーはめちゃ良かったし、貢ぎ物として連れてこられたタプティムを演じたリタ・モレノも綺麗だった。頑固な王の心を解きほぐしていく、同じく頑固なアンナを見ていると、『サウンド・オブ・ミュージック』という映画を思い出した。

 

ストーリーはシンプル。ハーレム暮らしをしている王は、自分の国を他の国家に追いつかせるためイギリスから家庭教を雇う。科学的な思考を子どもたちに身につけさせたいという進歩的な発想の持ち主だった。

 

とはいえ19世紀の国王。男尊女卑の発想や王としてのプライドの高さをアンナに指摘されて、怒り狂ったり反省したりする。あのいかつい顔のユル・ブリンナーがそんな演技をするから面白いんだろうね。

 

ただボクは先ほども書いたけれど、この時代のイギリスの威圧的な雰囲気に違和感を覚えていた。すきあらば植民地化しようという意図が見え隠れしている。そして王の味方のはずのアンナに対しても、アジアを見下しているような、どこか上から目線的な態度が気になった。考え過ぎかなぁ。

 

日本はちょうど幕末のころ。黒船の来航により、尊皇攘夷旋風が吹き荒れていたとき。甘い汁を見せてすり寄りながら、チャンスがあれば脅しをかけて植民地化しようという大国の気配がアジア全体に満ちていた時代だと思う。

 

だからこの映画の王の頑固さを、ボクはとても好ましく感じた。最新の科学を学びつつ、タイという国家の文化を必死で守ろうとしている。この人物は当時の王であったラーマ4世をモデルにしているそう。そしてこの実在の王によって、タイは他国の植民地になることを免れている。

 

そしてそれは日本も同じ。イギリスは薩摩に近づき、フランスは幕府に加担した。そして内戦状態になったけれど、最終的に植民地化を防ぐことができた。当時の日本の大名や志士たちが、世界の文化を受け入れつつも、日本独自のものを守ろうとしたからだと思う。

 

昨日、めちゃ面白い偶然に遭遇した。俳優の渡辺謙さんがブロードウェイで大ヒットした『王様と私』の日本公演を行うというプロモーションがあった。ちょうどその日にこの映画を観たという偶然に驚いた。

 

そしてもうひとつ驚いたことがある。幕末の日本で海外の技術を取り入れつつ、日本を侵略から守ろうとした大名がいる。それが薩摩の島津斉彬で、昨年の『西郷どん』で渡辺謙さんが演じていた。

 

この映画を観ながらユル・ブリンナーはタイの島津斉彬だなぁと思っていたから、偶然の一致に思わず吹き出してしまった。

 

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高羽そら|たかはそら(作家、小説家)プロフィール

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高羽そら(たかはそら)
今後の目標:毎年1つの物語を完成させたいと思います。
生年月日:昭和37年5月10日
血液型:A型
出身地:京都市

【経歴】
1962年京都市生まれ。数年前に生活の拠点を神戸に移してから、体外離脱を経験するようになる。『夢で会える 体外離脱入門』(ハート出版)を2012年1月に出版。『ゼロの物語Ⅰ〜出会い〜』、『ゼロの物語Ⅱ〜7本の剣の守り手〜』、『ゼロの物語Ⅲ〜次元上昇〜』の3部作を、2013年7月〜12月にかけて、オフィスニグンニイバよりAmazonのKindleにて出版。現在も新たな物語を執筆中。

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