努力の先でしか奇跡は起きない
人生においてまるで奇跡のようなことが起き、一気に人生が好転することはあると思う。それをチャンスと呼ぶ人もあれば、まぐれだと答える人もあるだろう。どちらにしても素晴らしいものであることは事実。
だけどそんな奇跡は、ただ漫然と待っていて起きるものじゃないと思う。もし起きたとしても、準備ができていない人は奇跡を体感できないだろう。
奇跡が奇跡としてその真価を発揮するのは、そこに至るまでの努力があってこそだと思う。言いかえれば努力なしの奇跡なんてありえない。ボクはそう思う。
そんなボクの想いを、見事に映像化してくれた映画がある。
『5パーセントの奇跡 〜嘘から始まる素敵な人生〜』という2017年のドイツ映画。ドイツの映画はこれまで観た記憶がない。少し不安を感じつつ観たけれど、めちゃめちゃ素晴らしい映画だった。実話を元にした、最高のヒューマンドラマだった。
主人公のサリーの夢は、一流のホテルでホテルマンとして働くこと。高校生のときにホテルのレストランで働いて、その決意を固めた。ところがある日、彼に絶望が襲いかかる。先天性の目の病気が発覚する。そして失明の危機におびえつつ手術を受けた。
どうにか失明は防ぐことができたけれども、彼の視力は正常な人の5パーセントしかない。それがどんな状況かは映画を観るとよくわかる。とてもじゃないけれど、普通の社会生活は不可能なレベルだった。
それでもサリーは盲学校に転校せず、おそるべき努力で普通高校を優秀な成績で卒業する。目が見えない分、他の感覚や集中力を発達させた結果だった。ところがどのホテルに就職を希望しても、5パーセントの弱視では面接さえ受けさせてもらえない。
そこでサリーは人生で最大の嘘をつく。障害者であることを隠し、ミュンヘンの5つ星ホテルの面接を受ける。これまたとてつもない努力によって、研修生として採用されることになった。その後はホテルのすべての業務で研修を受け、実際に顧客に接することで終了試験に合格すれば正式採用になる。
それでも研修は苦難の連続だった。同じ研修生として親友になったマックスの助けがなければ、研修を続けることはできなかっただろう。ところが障害を持っていることに関して嘘をつき続けたことで、サリーは窮地におちいる。
家族の経済的問題でアルバイトをすることになり、時間に追われて研修がおろそかになった。障害を黙っていたせいで恋人にも逃げられる。サリーは酒とドラッグにおぼれ、自滅するしかない状況まで追い込まれてしまう。
ところがサリーに奇跡が起きる。ここからの彼は本当に素晴らしい。まだ新しい映画なので、このあたりのことは割愛しておこう。
サリーに起きた奇跡は、彼の努力があったからこそ。それゆえ誰もが彼を助けようとしてくれた。そしてこの映画の見どころはドイツ社会の素晴らしさだと思う。障害者や難民の人たちに対して、これほど寛容な社会だと知らなかった。
障害者や亡命してきた人たちに寄り添える基盤が、ドイツ社会には定着しているんだね。だからこの映画を観終わったとき、やり切れない気持ちになることがない。幸せな気持ちになって心が癒される素敵な作品だった。そしてサリーの決してあきらめない強い気持ちに、映画を観た人は勇気づけられると思う。
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