呪いは実在するか否か
先日、ある心霊番組を見ていて驚いた。わら人形を使った呪いは聞いたことがある。だけどそれより恐ろしい呪い方があるそう。
呪いたい相手の髪の毛を用意する。そして誰のものでもいいから人間の歯。さらに隠されていたけれど、ある布が必要にならしい。
子供をいじめられた父親が、いじめた相手に復讐するため、ある占い師からその方法を聞いた。髪の毛はその子供をつけて、散髪に行ったときにこっそりと持ち帰った。人間の歯はネットで購入した。そして呪いを実行した。
なんとそのいじめっ子は、交通事故にあって意識不明になった。それで恐ろしくなった父親が、その道具一式をあるお寺に納めたという話だった。その寺の住職が占い師に接触した。するとその人は、同じく事故にあって意識不明だったそう。
人を呪わば穴二つ、ということかも。
さてさて、この『呪い』というものは実在するのだろうか? それとも人間の思い込みによって起きた現象なのだろうか?
そんな呪いをテーマにした小説を読んだ。古い小説なんだけれど、ボクが今年になって読んだなかでトップ1にあげられる作品。熱中症を考えなかったら、2〜3日徹夜してでも読み続けたいと思うほどの内容だった。
『ガダラの豚』中島らも 著という小説。
非常に長い小説。単行本で二段書きの小さな文字なのに600ページもある。毎日2時間読んだけれど、読了するまでに5日もかかってしまった。内容は大きく3つに分かれている
主人公は民俗学の教授。専門は呪術で、アフリカのケニアで呪術師の研究をしたことで、呪いが事実であることを論文で発表していた。第1部は、ユニークなキャラの紹介がメイン。テレビ局のプロデューサー、ディレクター、超能力者の少年、マジシャン等が登場する。
さらに主人公の妻がユニーク。7年前に夫とアフリカに行ったとき、当時7歳だった娘を気球の事故で亡くしている。5歳だった息子は日本にいたから無事だった。彼女は帰国してからうつ病を患い、結果として新興宗教にハマる。第1部はこの妻の洗脳を解くことがメインになっている。
第2部はテレビ局の取材で舞台はアフリカに変わる。主人公、妻、息子、そして主人公の助手や超能力者の少年も取材に同行する。そして恐ろしい呪術者に出会ってしまう。驚いたことに、その呪術者が自分の能力を増幅するのに使っていたのが、気球事故で死んだはずの主人公の娘だった。
記憶を失くしている娘を奪還して、一行はどうにかアフリカから脱出する。でもテレビスタッフたちを含めて、半数以上が命を落とす。そして第3部では娘を取り戻そうとするアフリカの呪術師が東京までやってくる。そして想像を絶する戦いが始まる。
とまぁこんなストーリーなんだけれど、とにかく簡単に語れない物語。コメディでもあるし、ホラーでもあるし、シリアスなドラマでもある。とにかくつかみどころがあるようでない。中島らもさんらしいよなぁ。
呪いや超常現象に対して、著者は登場人物を駆使することで、肯定したり否定したりしている。つまりどちらにでも取れる。そのあたりのバランス感覚が絶妙で、読んでいるうちに不思議な世界に自分が踏み込んでいることがわかる。
最後の最後で、とんでもないどんでん返しが待っている。そしてすべての伏線が回収される。その手法があまりに鮮やかなので、昨晩のボクは本を読みながら絶叫しそうになった。こんな面白いエンタメ小説はないと思う。
スピリチュアル、超常現象、ミステリー、ホラー等に興味のある人は、絶対この物語にハマるはず。初版が1993年なので、やや古臭い部分はある。だけどボクの世代には懐かしいし、若い人が読んでもストーリー的に違和感はないと思う。この小説は読まないともったいないよ〜〜!
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