行動は恐れを自信に変える
人間は変化を恐れる。いままでどおりであることに固執して、新しいステージに行くことを避けたがる生き物。まぁ、これは人間に限らず、動物全般が抱えているものかもしれない。
けれどもこの世界は諸行無常。一瞬たりとも同じ瞬間は存在しない。ほんの数秒で誰かが死に、誰かが生まれている。変化が常態である世界なのにそれを拒んでいると、抵抗によって苦悩が生まれる。それでは生きづらくて仕方ない。
変化はたしかに怖い。もしかしたら選択を誤って、いまより不幸になってしまうかもしれない。だったら高望みはしないから、いまのままでいいと思ってしまう。だけど思い切って変化を受け入れたら、これまで想像もしなかったような幸せが待っているかもしれない。新しい自分を発見できるかもしれない。
こうして人間は葛藤するんだろう。だけどじっと考えていても、何も変わらない。変化に対する恐れを克服する答えはたったひとつ。
それは行動するしかない。結果がどうなるかわからなくても、とにかく動いてみる。暗闇に向かってジャンプしてみる。とにかく最初の一歩さえ踏み出すことができたら、あとはどうにかなるもの。
勇気を出した行動を重ねることで、いつしか変化に対する恐れが自信に変わってくる。それは行動した人にだけ与えられるプレゼントだと思う。
そんなプレゼントを手にした女性の映画を観た。
『しあわせへのまわり道』(原題: Learning to Drive)という2014年のアメリカ映画。
主人公のウェンディは、有名な書評家としてニューヨークで充実した生活を送っていた。ところが20年以上連れそった夫が浮気をして家を出て、離婚調停を申請される。なんとかして以前の生活を守ろうと必死になるけれど、その変化を元に戻すことは無理だった。
一人娘が郊外に住んでいる。だけどいままで夫に運転を任せていたウェンディは、運転免許を持っていない。車さえ運転できればいつでも娘に会いにいけるのに、運転免許を取得する勇気が出ない。それは彼女自身が、変化に対する恐れを感じていたからだろう。
そんなとき、インド系アメリカ人であるダルワーンと出会う。タクシー運転手をしながら、昼間は自動車教習の教官を務めていた。ダルワーンに勧められて、ウェンディは自動車運転の練習を始める。
なんてことないストーリーなんだけれど、とても素敵な物語だった。最初ウェンディは車の運転に恐怖しか覚えない。だけどダルワーンに運転を習ううち、自動車だけでなく、自分の人生のハンドルもコントロールできるようになっていく。
恋に発展しそうな二人。でもそうならないのがこの映画のいいところだと思う。あくまでも免許を取得することで、二人の関係は終わりを告げる。だけど互いに影響を与え合うことで、二人はいままでとちがう新しいステージへと進むことになる。
ウェンディを演じたパトリシア・クラークソンがめちゃ良かった。運転の上達とともに、彼女の心が成長していく過程にワクワクした。
そして何より素晴らしいのが、ダルワーンを演じたベン・キングスレーの演技。インド人の役を演じるのは、もしかしたら『ガンジー』以来かもしれないね。とにかく他の映画の彼を忘れるほど、ダルワーンという人物のキャラが見事に立っていた。悪役をやっている姿が思い出せないほど。
怖いし勇気が必要なんだけれど、変化は人生につきもの。だから思い切って行動するしかない。そのことを笑いながらも教えてもらえる映画だった。
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