やっと観た『この世界の片隅に』
クラウドファンディングで資金を集め、公開されてからはネットでの口コミが広がって大ヒットとしたアニメ映画がある。
『この世界の片隅に』という作品。ずっと気になっていたけれど、なかなか観るチャンスがなかった。今年になってNHKが放送してくれたので、ようやく録画した作品を観ることができた。
『この世界の片隅に』という2016年のアニメ映画。
感想を書こうと思いつつ、どう切り出せばいいか迷っている。期待が大きかったせいなのか、ボクにとってはいいとも悪いとも言えない複雑な作品だった。
アニメとしての映像表現はとてもよかった。昭和8年ころから昭和21年までの広島や呉の様子が、生活習慣も含めて実写よりもリアルに伝わってきたように思う。おそらくこれがアニメという芸術が持つポテンシャルの高さなんだろうな。
空襲に明け暮れる軍港のあった呉で暮らす人たちの苦しみや悲しみが、主人公のすずが爆弾で右手を失い、同時に姪の晴美の幼い命を奪われたことに象徴されていたと思う。空襲で徐々に焼け野原になっていく呉と、すずの実家がある広島との対比はすさまじかった。
すずは実家に戻ることを決心する。自分が晴美を死なせたという負い目もあったし、空襲のない広島の実家が恋しい。だけど家を出ようとしたその日の朝、広島は一瞬で地獄になってしまった。この二つの街の比較は負の相乗効果となり、観ている人の心を戦争の恐怖が直撃する。
そしてエンディングにおいて、すずと同じような片手を失った母を亡くした戦災孤児の少女が、子供のいないすず夫婦に引き取られていくシーンは泣いた。その少女を温かく迎える夫の両親たちも素敵だった。
だけど物語全体として、どこか物足りない雰囲気がずっとぬぐえなかった。登場人物のキャラがつかみづらくて、うまく感情移入できない。すずの夫が、まるで妻を差し出すかのように幼なじみの水原の寝室へ行かせるシーンなんか???だった。夫の周作の考えていることが、よくわからない。
それから遊女のリンという女性が登場してくる意図が不明。あんなシーンいるの? とマジで感じた。それで調べてみると、原作の漫画ではかなり関わってくる女性らしい。映画では尺の関係で、ちょい出しするしかなかったのかな。だったらカットしてもいい場面のような気がする。
この時代を表現した映画なら、実写作品だけれども『小さいおうち』という作品のほうが、ボクの感性には強く訴えかけてきた。松たか子さんと黒木華さんが主演した作品で、東京大空襲が物語を左右する重要なシーンとなっている。
アニメから戦争の悲惨さは十分に伝わってくるんだけれど、どことなく中途半端な雰囲気がずっと気になってしまった。きっと原作の漫画を読んでから映画を観たら、もっと深く理解できるのかもしれないね。
あっ、そうそう。すずの声を演じたのんさんは、メチャクチャよかった。主人公の雰囲気にピッタリだったと思う。
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