平和ボケから目覚めよう
日本人のほとんどは平和ボケ。それはボクも含めてのこと。いまアメリカで起きている人種差別問題に関しても、日本人にとってはどこか遠い出来事に思える。ひどいことだし、抗議のデモをしている人たちの気持ちにも共感できる。だけどどうしても見えない壁のようなものがある。
その壁こそが、日本人の平和ボケだと思う。例えばいま香港で起きている国家安全法に対する反対運動などは、日本人はもっと注目すべきこと。なぜなら中国という日本近隣の大国が関わっていることだから。
香港や台湾の問題がこじれることで、欧米を巻き込んだ世界的な紛争に至る可能性は十分にある。そうなれば日本だって呑気にしていられない。なんらかの重大な決断を迫られることになる。最悪の場合、武力抗争になるかもしれない。そうなって平和ボケから目覚めても、時すでに遅しということになってしまう。
島国で民族問題が比較的少ない日本人は、世界の現状を直視することで平和ボケから目覚めておく必要がある。こんなとき役に立つのが映画だと思う。
今日観た映画は、平和ボケで安穏としていたボクの横っ面をひっぱたいて起こしてくれた。
『グッド・ライ 〜いちばん優しい嘘〜』(原題:The Good Lie)という2014年のアメリカ・インドの合作映画。先ほども書いたように、この映画は日本人の平和ボケを吹き飛ばしてくれる。それも恐怖ではなく感動によって。観たことがない人は、絶対に見るべき秀作だと思う。
主人公たちは1983年に起きたスーダン内戦の難民たち。まだ子供だったマメールたち兄弟は、北スーダンの攻撃を受けて両親も故郷も失う。そして1200Km以上も歩き続けてケニアの難民収容キャンプへ逃げる。
映画の前半はそこまでの物語。平和なサバンナの村が、一瞬で地獄となる。子供たちは逃避行中に仲間を病気で失ったり、兵隊に見つかって命を落とす。もうすぐでケニアというとき、五人の兄弟で年上だったテオが敵兵に囚われてしまう。ブッシュに潜んでいた他の4人の兄弟たちを助けるため。
それから難民キャンプで十数年という月日が過ぎる。そして成人した4人の兄弟にアメリカによる移民の受け入れ許可が出る。映画の後半はアメリカでの彼らの生活が中心となる。せっかくカンザスシティに到着したのに、紅一点だった姉のアビタルだけはボストンに送られてしまう。これは移民受け入れの不備のため。
そのうえ2001年になって911のテロが起きる。そのことによってスーダンからの移民システムが閉鎖され、ボストンの妹を連れ戻すこともできない。ケニアにいる大勢の仲間たちも、アメリカに移住する望みが絶たれてしまった。
男兄弟3人は、慣れないアメリカで必死で働く。マメールは医者になるのが夢で、頭もよくて難民キャンプで経験も積んでいる。なのにスーパーの店員のような仕事しかできない。電話も見たことがないし、マクドナルドさえ知らない。カルチャーショックを受けながら、故郷のスーダンを思う彼らの孤独が痛いほど伝わってくる。
ただでさえ戦争によるトラウマを背負っているのに、アメリカ社会は決して優しくない。彼らを保護する福祉スタッフがいなければ、生きることはできても、彼らの心はこわれてしまったかもしれない。
そしてラスト近くですごいことが起きる。なんと兵士に連行されていたテオが生きていて、難民キャンプに到着したとのこと。だけど911の影響で兄をアメリカに移住させることができない。そこでマメールが途方もないことを実行する。
それが何が知りたい人は、是非ともこの映画を観てほしい。そして平和ボケの頭を吹っ飛ばして欲しい。この物語はほぼ実話であり、かつ出戦している兄弟役の俳優たちは、スーダンの難民でアメリカへ移住してきた人たち。
それだけに彼らの演技からは『真実』しか伝わってこない。本当に素晴らしい映画だった。
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