もしかして全て実話だったりして
こんなこと書いていいの? とマジで心配する小説を読んだ。経済小説で名前は変えてあるけれど、どの会社を指しているのか誰でもわかる。
『トヨトミの野望』梶山三郎 著という小説。自動車メーカーを扱った経済小説なので、タイトルを見ただけでトヨタ自動車のことだとわかる。小説が始まっても、愛知県にある本社ビルのことを隠していない。
それだけにありのままに書きづらいはず。ところがこの著者は覆面作家と名乗っている。つまりどこの誰が書いたのかわからない。もしかしたら会社の内部を暴露できる立場の人かもしれない。だとしたら、この小説のほとんどは実話かもしれないと考えてしまう。
そしてそう感じれば感じるほど、めちゃめちゃ面白い小説だと思える。もしかしたらトヨタ自動車としては反論するより無視することを選び、これがフィクションであることを印象づけようとしているのでは? なんてうがった想像をしてしまうほど面白かった。
主人公は武田剛平という人物。叩き上げの社員で、トヨトミ自動車において、豊臣家以外の人間として初めて社長になったという設定。社長就任は1995年で、バブル崩壊やリーマンショックをくぐり抜け、トヨトミ自動車を世界一の自動車メーカーとなるように導いた人物として描かれている。
その武田の活躍も面白いけれど、もっとワクワクするのが豊臣家との確執。武田は会長となった豊臣新太郎のバックアップを受けて社長に就任した。フィリピンに飛ばされて干されていた武田の実力を見抜いたのが新太郎だったから。
ところが武田はカリスマ性があり、トヨトミ自動車をかつてない位置にまで押し上げた。彼を信奉する社員も多い。そして武田自身も、これからトヨトミ自動車がグローバル企業として生き残っていくには、豊臣家を天皇のような実権を持たない象徴にしようと画策した。持株会社を作ることで、豊臣家の会社に対する影響を無くそうとする。
それを知った新太郎は激怒して、武田を追いめることで社長を退任させた。だが武田も黙っていない。自分の意向を継ぐ後任社長を置くことで、会長として影響力を持ち続けた。だがやがて、豊臣新太郎がクーデターを起こす。
武田派の社員を一掃して、武田を会長職からも追い出し、かつ自分の息子である豊臣統一を社長にする。だがその当時のトヨトミ自動車はアメリカの逆襲によってえ経営危機に陥っていた。そんな新社長の統一を助けたのが、武田だというオチになる。
あまりに面白かったの、実話との共通点を調べてみた。するとクーデターや創業者との確執はわからないけれど、小説で起きる出来事は実際のことばかり。そして小説のモデルが誰なのかも簡単にわかった。
武田剛平=奥田 碩さん
豊臣新太郎=豊田章一郎さん
豊臣統一=豊田章男さん(現社長)
つまりいまのトヨタ自動車の社長さんがモデルとなって登場しているということ。それだけに最初から最後まで必死で読んでしまった。フィクションとしても最高に面白いけれど、実話だと思って読むとさらに興奮する。普段は経済小説はあまり読まないけれど、この作品は本当に楽しかった。
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