未来が見えたらボクは困る
もし自分の未来が予知できるとしたら、あなたはそんな能力が欲しい?
ボクはいらないなぁ。結果を先に知って行動するなんて、面白くないし面倒なだけ。嫌な未来が見えたら、それを変更する方法を探すのに必死になるだろう。そんなことをくり返していたら、いまの自分を楽しめない。
少し前にニコラス・ケイジが主演する『Next』という映画を観た。主人公は2分先の自分の未来を見ることができるというもの。そして今日観た映画も、同じく未来が見えるという女性の物語だった。
『ラスト・シーン〜未来を見た女〜』(原題:Last Seen in Idaho』という2018年のアメリカ映画。
主人公のサマーは、3人しかいない小さな自動車修理工場で働いている。両親がいないことで、妹のために過去にはヤバいことをやっていた。偽札を作ったり、ギャングの恋人がいたりというように、あらゆる犯罪に手を染めていた経験がある。
だけどこの工場で働くようになって、ずっと真面目に生きてきた。ところが自動車工場の経営者が、サマーの元彼によって犯罪に巻き込まれる。選挙を控えた市長の依頼で、そのギャングは対立候補を殺した。その遺体の処理を工場の経営者に命令していた。
さらに偶然に居合わせた修理工まで殺してしまう。その一部始終を見てしまったサマーは、必死で逃げようとした。どうにか車に乗り込んで走り出したとき、銃撃されたことで車は炎上。命は助かったけれど、事故に関する記憶を失くしてしまう。
そんなサマーに異変が起きる。事故によって臨死体験をしたことで、未来が見えるようになった。そしてギャングたちの犯罪の記憶も復活した。そのことを知ったギャングは、当然ながら彼女の命を狙うという展開。
この作品は何かと惜しい映画だった。ストーリーはかなりよくできている。未来が見えるということに関しても、選択を変えることでちがう未来へ、つまりパラレルワールドへと移行する。そのあたりはよく考えられていた。
ただ問題なのは俳優さんの演技。これがちょっとキツい。サマー役の女優さんは元犯罪者というクールな感じを意識しすぎて、どうにも中途半端。ギャング役の俳優さんたちも見た目は怖そうなのに、ラストでやられるシーンがもうグダグタ。
もうひとり重要な人物として、ギャング組織に潜入していた刑事がいる。サマーと恋仲になってラストはハッピーエンドで終わるけれど、謎の人物であることを強調しすぎて、かえって見え見えだったのが惜しい。何かと残念な作品だったなぁ。
もしもっとうまい俳優さん、あるいは能力のある監督さんが関わっていたら、ストーリーがいいだけにかなり上質の作品になったと思う。
未来が見えるという物語は、どうしてもストーリーが読めてしまう。つまり都合の悪い未来を変更することで、主人公たちが危機を切り抜けるというもの。だけどこのテーマを扱うのなら、未来を知ることとのデメリットもストーリーに盛り込むべき。
たとえばエンディグで、恋仲になった主人公たちの不幸な未来が見えてしまうとかね。未来を知ることのメリットだけで物語を作ってしまうと、原因と結果という因果関係に物語が縛られてしまう。主人公がラストで見えた未来をあえて信用しない、というストーリーにしたらベストだと思うなぁ。
ブログの更新はFacebookページとTwitterで告知しています。フォローしていただけるとうれしいです。
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。
コメント (0件)
現在、この記事へのトラックバックは受け付けていません。
コメントする