三つの大悪の理由に涙した
ボクがもっともハマっている男性ヴォーカリストは、イギリスのジェームス・アーサー。あの独特のしゃがれた声に魅了されて、ヘビロテリストに必ず入っているミュージシャン。最近になってシガーラというDJとのコラボ曲をリリースしている。
『Lasting Lover』というタイトルで、シガーラのプロデュースなのでダンス曲になっている。その元歌も最高なんだけれど、昨日になってその曲のアコースティクヴァージョンのミュージックビデオが公開された。これが原曲よりもさらにいい。なぜならジェームスの声の良さが見事に反映されているから。
百聞は一見に如かず。そのビデオのリンクを貼っておこう。シンガーソングライターとしても才能のある人で、作曲能力としてはエド・シーランを超えているとボクは思う。
彼のしぶさがいいんだよね。そしてジャンルはころっと変わるけれど、ある人物が持つしぶさ、あるいは空気感に、ボクは10代のころから魅了されている。それは戦国時代の武将。ただ謎の多い人で、その実態がなかなかつかめなかった。
だけどある小説を読んで、その武将のことが少し理解できたような気がする。
『じんかん』今村翔吾 著という小説。ボクは今村さんの『童の神』という小説を読んで以来のファン。それでこの作品の内容を知らずに読み出してびっくり。なんと主人公はボクが惚れ込んでいる武将だった。
その名は松永久秀。大河ドラマの『麒麟がくる』を見ている人なら、彼の役を演じている吉田鋼太郎さんの顔が浮かぶだろうと思う。
ボクが戦国武将でイチオシなのは織田信長。彼ほど心惹かれ、かつ真実の姿を知りたいと感じる武将はいない。そんな信長が不思議な対応をした武将がいる。それが松永久秀だった。
松永久秀は素性がしれない。斎藤道三のように民衆のなかから成り上がってきた可能性が高い。それはこの小説でも採用されている。ただボクがずっと不思議だったことがある。元は三好家の重臣だったけれど、信長が足利義昭を擁して上洛したときに信長の家臣となっている。
そんな信長に対して、松永は二度も謀反を起こしている。そしてあの信長が、一度目は許し、なんと二度目も彼を許そうとした。少しでも信長について知っている人なら、そんなこと信じられないはず。ボクもそのことがずっと謎だった。
この小説では、その理由が著者により語られている。二度目の謀反を起こしたことを知った信長が、小姓の狩野又九郎に松永久秀の真実の姿を話すという構成になっている。つまり信長が語り手となっている。
そして事実を知った又九郎が、二度目の謀反を起こした久秀に会いに行く。信長の命を受けて、彼を助けるためだった。史実としては、二度目の謀反で松永久秀は自害する。ただその最後のかっこいい姿に、ボクは涙を止められなかった。
彼は三つの大悪を犯したと言われている。主家である三好長慶を殺した。将軍であった足利義輝を殺した。そして三つ目は東大寺の大仏殿を焼き尽くしたというもの。
そのすべてが彼のやったことではなく、愛する者を守るためにその罪を受けたことが明かされていく。その理由を思い返すだけで、ボクはいまでも慟哭してしまいそうになる。なんて素敵な男なんだろう。謀反を起こしても信長が助けようとしたのがわかる。
もちろんこれが史実かどうかはわからない。だけどボクのなかで10代のころから疑問だったことが解けたような気がしている。まだ今年になって出版されたばかりの小説なのでネタバレはしない。気になる人は読んで欲しい。少し長い小説だけれど、読む価値のある素晴らしい作品だと思う。
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