この映画は今こそ観るべき
今年のアメリカ大統領選挙は異例づくめで、第三者の立場としてはなかなか興味深い。まぁ、日本とアメリカの関係を考えたら、日本人は決して第三者ではないけれどね。
アメリカの二大政党の交代劇はドラマチック。同じなのは建築物としてのホワイトハウスだけで、それ以外の人的要因は何もかもが一気に変わってしまう。日本でも民主党政権が誕生したときに同じようなことがあったけれど、アメリカほど激しい変化じゃなかった。
そんな二大政党の攻防は、アメリカの歴史でもある。もしいまのアメリカで起きていることをリアルに感じたかったら、この映画がオススメ。
『バイス』という2018年のアメリカ映画。あの911テロが起きたとき、ブッシュ政権における副大統領だったディック・チェイニーを描いた作品。彼は「アメリカ史上最強で最凶の副大統領」と呼ばれた人物。そう呼ばれるようになった理由が、シリアスながらもコメディタッチを加味して表現されている。
ボクも当時はチェイニーについて悪い噂を耳にした。ブッシュ大統領は単なるお飾りで、実質的な大統領は彼だというもの。そんな噂がある程度の事実であることを、この映画は語っている。
ディック・チェイニーを支えたのは、彼の妻であるリン・チェイニー。彼女がいなければ、田舎で肉体労働をするだけの男で終わっただろう。大学を中退して酒でトラブルばかり起こした彼を一念発起させたのが妻だったから。
チェイニーの願望は大統領になることだったはず。だけど仕事はできるけれど、共和党内での評判は芳しくない。それでも最年少でフォード大統領の首席補佐官を務めていた。だけど民主党政権になったことで政治から身を引いている。
ところがブッシュ氏が大統領選挙に出馬することになった。父親を信奉していたチェイニーは、息子のジョージの申し出を受けて副大統領候補になることを承諾した。その理由はブッシュがボンクラだったから。こんなこと映画で語るなんて、さすがハリウッドだよねwww
チェイニーは法律家を側近に置き、大統領の権限拡大の法的根拠を得た。それは実質的にアメリカを自分の思うままに動かすため。そしてブッシュ政権において、あの911が起きる。誰もが不安と恐怖に苛まれたが、ひとりチェイニーだけはチャンスだと見ていた。なぜなら戦争を起こせるから。
その後に起きたイラク戦争の無意味さは歴史が証明している。大量破壊兵器などイラク国内から見つかることなく、イラクとアルカイダとの関係も証明できなかった。フセインを打倒することがだけが目的だと言われても仕方ない。
新しい映画なので、具体的な内容についてはこの程度にしておこう。とにかく見ものなのが、主役のチェイニーを演じたクリスチャン・ベール。冒頭のシーンでチェイニーが登場しても、まったく彼だとわからなかった。チェイニー本人が出演しているような気分だった。
クリスチャンはこの映画のために18キロも体重を増やしたらしい。すごい役者魂だよね。とにかく彼の演技を見ているだけで得をした気分になる作品だった。
そして妻のリンを演じたエイミー・アダムスも最高の演技だった。この人が出演する映画は、絶対にまちがいないよね。
ボクのイチオシは、ラムズフェルド国防長官を演じたスティーブ・カレル。つい先日紹介した『フォックスキャッチャー』という映画で、ロス五輪の金メダリスト殺すという映画で主役をしていた。コメディアンとしての彼のイメージは、すでにボクの記憶からは薄れている。味のあるいい役者さんだよね。
とにかくいま観るならこの映画。そうすれば共和党と民主党のこれまでの確執をリアルに感じられる。かなりリベラル寄りの映画なんだけれど、そのことについてもエンドロールで触れている。エンドロールは必見だよ!
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